宇野選手は、インフルエンザ明けの影響からか、ジャンプがなかなか決まらなかった。失敗するとその分体力を消耗するが、その中で最後までしっかり滑り、頑張っていたと思う。優勝したフェルナンデスも、本来の体のキレが見られず、本調子ではない印象だった。表現力などを評価する演技構成点はフェルナンデスの方がSP、フリーともに上回ったが、個人的には宇野選手のフリーの点は、もう少し出てもいいと思った。

 五輪で勝つのか、五輪に出場したいのか。今季のピークをどこに持ってくるかは選手の立ち位置によって違う。例えばフェルナンデスは、スペイン国内に敵はおらず五輪まで調子を上げる必要はない。日本の場合、五輪出場が懸かる12月末の全日本選手権と来年2月の五輪、2つのピークをつくる必要があり、難しい。今、日本男子は世界をリードする力がある。五輪での活躍を考えれば、早期の代表内々定なども一考の余地はあると思う。羽生選手のケガや、宇野選手の病気で健康が何より大事だと感じた。各選手にはあらためて体調管理を心がけてほしい。(10年バンクーバー五輪代表、11年世界選手権銀メダリスト)