右足首故障からの復活優勝を狙う羽生結弦(24=ANA)が、今季自己最低の94・87点の3位発進とつまずいた。

冒頭に予定した4回転サルコーが2回転となるミスが響き、点数が伸び悩んだ。昨年11月のグランプリ(GP)シリーズロシア杯以来124日ぶりの試合となり、23日のフリーで2年ぶり3度目の世界一を目指す。過去2度の優勝はいずれもフリーで逆転している。

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正直な気持ちを吐き出した。羽生は「久しぶりに頭が真っ白になりましたね」。ミックスゾーンで少し困惑した表情を浮かべた。

1万8000人の期待を一身に浴びた。冒頭の4回転サルコー。跳んだ瞬間にほどけて2回転になり、会場は一斉にため息に包まれた。その後はノーミスでまとめたが、4回転サルコーが2回転と判定されて0点となり点数が伸びなかった。

久しぶりの国内戦だったからこそ力みが出た。実戦はロシア杯以来124日ぶりだが、国内戦ともなれば17年4月21日の国別対抗戦(東京)のフリー以来、実に699日ぶりだった。それゆえの大歓声。「ちょっときばりすぎた。声援を受け止めたい気持ちがあった」と空回りした。演技前の6分間練習でも、1度だけ4回転サルコーをミス。「サルコーはウオームアップしなくても跳べるようなジャンプ。それを信じ切ればよかった」と考えすぎてしまった。

出遅れはしたが、焦りはない。報道陣とのやりとりでは「めちゃくちゃ悔しい…。でも1面に『悔しい』って書かれるのは嫌。でも『頭真っ白』が1面になるのか。書かないで下さいね」とちゃめっ気たっぷりに話すなど気持ちに余裕があった。その後の会見でも「もっと自信を持って、もっと王者らしくいないとダメだなと思った」とどっしりと構えた。

何度も困難を乗り越えてきたからこそ自信がある。14、17年の世界選手権はフリーで逆転。右足首を負傷した昨年ロシア杯も、痛み止めを飲んだ強行出場でGP連勝を達成した。「こういう時の対処法は知っている。経験をフリーに生かす」。逆転の道筋は、すでに頭の中にある。【佐々木隆史】

◆羽生の右足首負傷

18年11月のGPロシア杯の練習中に4回転ループの着氷で右足首を負傷。「右足関節外側靱帯(じんたい)損傷、三角靱帯損傷、右腓骨(ひこつ)筋腱(けん)部損傷。3週間の安静固定、その後リハビリ加療に約1カ月を要する」と診断された。同年12月のGPファイナルと全日本選手権を欠場。17年11月のNHK杯でも練習中に同じ箇所を負傷していた。