<ラグビー大学選手権:帝京大15ー12天理大>◇8日◇決勝◇国立

 帝京大(対抗戦1位)が天理大(関西1位)を破り、82~84年度の同大以来史上2校目の3連覇を達成した。司令塔のSO森田佳寿主将(4年)が故障を抱えて強行出場。後半31分に12-12と追いつかれるも、同39分に森田のPGで勝ち越した。強力FWを前面に押し出す戦い方は、時に「面白くないラグビー」と揶揄(やゆ)されながら、森田は「自分たちの強みを出す」と、動じずに貫いた。

 やはり最後は帝京大FWの圧力が勝った。残り3分を切って12-12。天理大がBK勝負ではなく、FWでボールキープ。両校優勝狙いの時間稼ぎか。「相手がFWで来るなら、こっちも」(NO8李)。火がついた。猛プッシュをかけ反則を誘う。正面24メートルからの森田のPGが右ポストに当たって入った時、残り時間は13秒だった。

 森田は満身創痍(そうい)だった。11月明大戦で左肩を負傷、大みそかに左腕、元日に左足首、2日の準決勝では左ふくらはぎを痛めた。それでも「弱っている姿は見せたくない」と、毎日のように「絶好調です」と話した。そんな中、試合終了間際のPGをイメージし、最も重圧のかかる正面からのキックを練習。想定通りの勝ち越しPGは「無心でした」と笑った。

 帝京大は「自分たちの強みを出す」をキーワードとしてきた。強みとはFWと防御。試合開始直後にモールで20メートル押し込み、平均体重で約7キロ上回るスクラムでは反則を誘い、相手ラインアウトの半数で球を奪った。森田の負担を減らすべく、相手司令塔SO立川のマークをFW陣が担った。華やかなBK展開が少ないと、「面白くない」とも言われる。だが、森田はそんな声も「全く気にならない。自分たちが1年間準備してきたことですから」と、きっぱりと言う。

 岩出監督は「ボールの動くラグビーは、僕だってやりたいですよ」と苦笑いする。「やりたいラグビーと、やれるラグビーは違う」とも。高校日本代表級がそろう伝統校とは、台所事情が違うという意味だ。たとえ平凡な選手でも体を鍛えさせ、相手への圧力、防御力を高めることで、3連覇への道筋をつくった。

 SH滑川は「全員がしっかりディフェンスできる。それは帝京大の伝統にしてほしい」と、後輩に期待した。岩出監督は「FWの力は落とさずに、戦術の幅を増やすように頑張ります。勝ち続けるための進化を」。帝京大の伝統は、まだ始まったばかりなのかもしれない。【岡田美奈】