<W杯スキー:女子ジャンプ>◇8日◇ドイツ・ヒンターツァルテン(HS108メートル、K点95メートル)

 

 15歳の高梨沙羅(北海道・上川中)が、14年ソチ五輪の“プレ大会”で金メダル奪取を狙う。今季初開催されたW杯で2位に入り、日本女子初の表彰台に立った。W杯個人総合でも3位に急上昇し、世界のトップ3入り。今後はシニアの大会からターゲットをジュニアに絞り出場。13日開幕の冬季ユース五輪(オーストリア・インスブルック)、2月の世界ジュニア選手権(トルコ・エルズルム)で、まずは世代の頂点を目指す。

 15歳は“初めて”見る風景に酔いしれていた。高梨は、優勝こそ逃したものの、日本女子で誰も乗ったことのない高みへちょこんと上がった。14年ソチ五輪を見据え、今季から始まった大会で表彰台に立ち、歴史にその名を刻みつけた。「やっぱり最高の気分。W杯で表彰台に立つことができてとてもうれしい」。前日7日は17位に終わったが、修正能力の高さを見せ、世界基準を証明した。

 150センチの小さな体が躍動した。1回目は風が定まらない難しい条件。高梨の番で一時、中断したが動揺することなく、向かい風をとらえ100・5メートルで4位。2回目も安定したジャンプで99・5メートルと順位を2つ上げた。「2回目は向かい風がなかったのに、あそこまで伸ばせて良かった」と満足げに話した。

 プレ五輪での金メダルを視界にとらえた。高梨は今後、W杯には出場せず、13日開幕のユース五輪、2月の世界ジュニア選手権でのメダル取りへ挑む。ユース五輪には夏の総合女王、16歳のコリン・マテル(フランス)、世界ジュニアには今大会と合わせW杯2勝で個人総合首位の17歳のサラ・ヘンドリクソン(米国)、同総合6位で18歳のカテヤ・ポズン(スロベニア)ら女王候補が出場する。

 女子は五輪正式種目に採用されてから、世界各国が急激に強化を進め、若い世代の台頭が目立つ。ジュニア世代を制したものが、2年後の大舞台を制すると言っても過言ではないだけに、ジュニアの2大大会の金メダルは重要な意味を持つ。高梨はシーズン当初からW杯以上に意識し「メダルを必ず取りたい」と言い続けた意味がそこにある。

 昨夏、高梨は初めてウエートトレーニングを取り入れるなど肉体強化にも力を入れている。正確な数値こそ測っていないが、自宅の柱に刻み続ける垂直跳びの印はこの1年で5センチ以上も上がった。大会期間中も時間さえあればランニングをするなど、常に世界を意識する。全日本スキー連盟の斉藤智治ジャンプ部長は「間違いなくメダル候補」と話す。2年後に向け高梨は「経験を1つ1つ力にしてたどりつければ」。世代統一を足がかりに、世界の頂点へと向かう。【松末守司】