黛まどか「17文字の詩」タイトルカット



[English]

街灯の下に人影クリスマス
(がいとうのしたにひとかげくりすます)

 クリスマスの街角、街灯の下に人影が見えます。恋人同士なのでしょうか? 足早に通り過ぎる人々は誰も、そんな人影を見て見ないふり。みんな自分のクリスマスが待っているのです。

 レストランのテーブルで、あたたかな家の灯の中で、そして街角の街灯の下で……。人の数だけのクリスマスが繰り広げられる夜。たくさんの人々のたくさんのクリスマスが交錯しながら聖なる一夜は更けていくのです。

[季語] クリスマス
[季節] 冬


雪の夜の夢に別れて夢に逢ふ
(ゆきのよのゆめにわかれてゆめにあう)

 夢とはたいてい、ストーリーの途中で目が覚めてしまうものです。ところがその夜の夢は、出逢いから別れまでが映画のように完結する一つのストーリーとなっていたのです。

 夢の中で出逢い、夢の中で別れていった二人。二人の出逢いも別れも、なにもかもが儚い幻でしかなく、それゆえロマンチックな一夜の夢……。

 闇をかすかに照らしながら、夜の雪が降り続いています。こんな夢を見たのも、ロマンチックな雪の夜のせいなのかもしれません。

[季語] 雪の夜
[季節] 冬


思ひ出せぬ名も二つ三つ日向ぼこ
(おもいだせぬなもふたつみつひなたぼこ)

 あたたかな冬の日溜まりの中で日向ぼこをしていると、いろいろなことを次々と思い出すものです。浮かんでは消えてゆく懐かしい人々の面影。その中には、もう名前さえ思い出せない人も何人かいます。

 だけどそれは、慌ただしい日常生活の中では決して思い出すことのない人たち。そんな人たちを思い出したのも日向ぼこだからなのでしょう。

 ささやかだけれど懐かしい、遠い記憶を旅しながら、日向ぼこのひとときがゆったりと過ぎてゆきます。

[季語] 日向ぼこ
[季節] 冬


凩のこぼしてゆける二人かな
(こがらしのこぼしてゆけるふたりかな)

 寒い寒い凩(こがらし)が吹く夕暮れ時。誰もが凩に追い立てられるように家路を急ぐ中、いつまでもそこから立ち去ろうとしない二人がいます。まるで凩がとりこぼしたかのように……。

 恋人同士なのでしょう。たとえ冷たい凩が吹いても、二人でいられる時間をいつまでも惜しみ、たとえ凩がどれほど冷たくても、一緒にいればあたたかな二人なのです。

[季語] 凩
[季節] 冬




Main PageBacknumber Menu