黛まどか「17文字の詩」タイトルカット



[English]

蟻穴を出てクレープの匂ふ街

 クレープの甘い匂いが漂う街・原宿。流行発信地であり、いつも溢れんばかりの若者たちで賑わう原宿にも蟻の巣はあり、春になると眠りから覚めた蟻たちが穴から出てきます。

 この街で、穴から出てきた蟻たちが真っ先に出会うのは、きっとクレープの匂い。自然界の小さな小さな命と都会との出会い、現代の春のささやかなワンシーンです。

[季語] 蟻穴を出る
[季節] 春


子遍路の鈴の音高く過ぎにけり

 諸願成就のため、四国八十八ヶ所の札所(霊場)を巡るお遍路さん。一行が過ぎて行くとき、子遍路の杖につけられた鈴が、ひときわ高く聞こえました。

 子供には遍路の意味などわからないのでしょう。春光の中、無邪気に飛び跳ねながら歩いてゆく子遍路。その明るく元気な鈴の音は、四国に春を呼んでいるようにも聞こえるのです。

[季語] 子遍路
[季節] 春


バレンタインデー夕星の薄ピンク

 ひそかに想いを寄せている人に、思い切って告白をしようと決めたバレンタインデー。「会えるかしら……」期待と不安、そして、ときめく胸を抑えながら迎えた夕べ。夕闇の空に灯りはじめた星たちが、今日は淡いピンク色に見えます。“ほのかな恋心”というフィルターがかかって……。

[季語] バレンタインデー
[季節] 春


春の波恋に引き際ありにけり

 終わりかけた恋を胸に訪れた春の海。まだ人気のない渚。穏やかに寄せては返す波。波が残していった小さな桜貝……。この恋を美しい思い出とするには、春の陽光に輝くこの波のように、明るくすみやかに引いていくことでしょう。引き際を美しく終わらせることができた恋は、きっと次の素敵な恋を招いてくれるはずだから……。

[季語] 春の波
[季節] 春




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