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[English]
大西日リュック背負ひしまま抱き
一日を歩き終え、へとへとになってようやく目的の村に辿り着くと、先に着いていた巡礼者たちが、無事に着いたことを喜び、リュックサックのまま抱き締めてくれたものです。巡礼者たちは、その日一日、同じ道、同じ太陽の下を歩き続け、同じ苦しみを味わった者同士。お互いに抱き締め合うだけで、言葉はなくても、その達成感や喜びをわかり合うことができるのです。
そんな巡礼者たちを、厳しい暑さを残しながらも西へと傾きかけたスペインの日差しが大らかに包み込んでいます。
[季語] 大西日
[季節] 夏
泉汲む木のふところに杖あづけ
巡礼者にとって一番大切なのは水。水筒の水が尽き、喉がカラカラに渇いたときに見つけた泉や水飲み場は、まさに命の水。これでまた命がつながる、歩き続けられ
ると、あらためて水のありがたさを感じるのです。
泉を見つけたとき、巡礼者たちはそれまで手にしてきた杖を近くの木蔭などに立て置き、しばらくは一心に水を飲みます。巡礼者に訪れた安らぎのひとときは、同時に一緒に歩いてきた杖にとっても、休息のひとときとなります。
[季語] 泉
[季節] 夏
あるときは影に従ひ夏帽子
サンチャゴ巡礼道ではひたすら西を目指して歩いてゆくので、午前中は自分の前に影ができ、午後は後ろに影ができます。そのため、午前中は影に従って歩くと、大きく道を間違えることはありません。影とは曳くものというイメージがありますが、ときに人は影に導かれて歩くこともあるのです。
生きていく上でも、ときには影が先に立ち、その影に従うようにして進んでいくことがあります。自分から生まれた影ですが、そこにも私たちが学ぶべきこと、導かれることは存在しているのです。
[季語] 夏帽子
[季節] 夏
尖塔の烈しき雷を誘ひけり
サンチャゴ巡礼道沿いには、とても立派なゴシック様式のカテドラル(聖堂)がいくつも建っています。ある日、突然の激しい夕立に雨宿りをしながら外を眺めていると、暗い空へ突き刺さるように建ったカテドラルの尖塔を目がけるように雷光が走っていく様子を目にしました。その様は、まるでカテドラルの尖塔が雷光を誘っているようにも見えます。
人々が救いを求めて集まるカテドラル。そこへ神の怒りでもあるかのように落ちていく雷。カテドラルの別の一面を垣間見てしまったような強烈なシーンでした。
[季語] 雷
[季節] 夏
草刈つて神の匂ひの道生るる
古い巡礼道には、鬱蒼と茂った夏草に覆われている道もたくさんありました。村人たちが草を刈り、ようやく本来の道が現れるのですが、草を刈ったばかりの道を歩いていくと、むせ返るような夏草の匂いがたちこめています。
神へと続く巡礼の道、そしてその道に漂うたくましい夏草の生命力の匂い……。もしも神に匂いがあったとすれば、こんな匂いなのかもしれないと思ったのです。
[季語] 草刈る
[季節] 夏
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