黛まどか「17文字の詩」タイトルカット



[English]

登るべき山を待たせて野薔薇摘む

 目の前に登らなければならない山があるというのに、その手前で見つけた可愛い野薔薇につい足を止めてしまった私。ひたすら先へ先へと急ぐことも巡礼の一つなのでしょうが、寄り道をしながら進むことも巡礼の一つ。目の前の山は、私が何をしていようがどっしりとそこにあり、いつまでも待っていてくれるのです。

 大らかな山の懐はまるで神の懐のよう。山懐に咲く野薔薇を摘みながら、神の大きな懐で遊ばせてもらっているようにも感じたひとときです。

[季語] 野薔薇
[季節] 夏


君に会ひたしアマポーラ赤かりし

 「アマポーラ」とは、スペインに咲いていた真っ赤なひなげしの花のことです。

 巡礼道を歩いていると、さまざまな人のことを思い出します。日本に残してきた友人、家族、巡礼道で出会った巡礼者たち、コーヒーをご馳走してくれた村人……e tc。中には、もう二度と会えないだろう人々も胸をよぎってゆきます。

 だけど、アマポーラの情熱的な赤を見るたびに思い出す人は、やはり……。

[季語] アマポーラ
[季節] 夏


手廂に来し方を見て涼しかり

 しばらくは脇目もふらず、休息も取らず、ひたすら歩き続けた後、見晴らしのよい高台で一息つくことにしました。振り返り、眼下に広がった風景を手廂に見ると、 これまで歩いてきた道が長く続いています。

 苦しいことも辛いこともあった道ですが、今その道に感じるのは不思議といとおしさばかり。きっと、一生懸命歩き続けて来た道だからこそなのでしょう。高台を吹き抜けてゆく風が、体にも心にもことさら涼しく感じられます。

[季語] 涼し
[季節] 夏


巡礼の木蔭小さく分け合へる

 炎暑の麦畑の中を延々歩き続け、ようやく見つけた一本の木の蔭。そこには、同じように炎暑の中を歩き続けてきた多くの巡礼者たちでいっぱいでした。

 ここまでの道程がどんなに辛かったかということは巡礼者が一番わかっています。決して大きくはない木蔭をさらに少しずつ分け合い、譲り合いながら休息を取る巡礼者たち。歩くことだけではなく、こうして木蔭を分け合うことも巡礼のひとつ。巡礼者たちはいろいろな場面で助け合いながら歩いて行くのです。

[季語] 木蔭
[季節] 夏




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