黛まどか「17文字の詩」タイトルカット



[English]

もう声のとどかぬ船や春日傘

 少しずつ遠くなってゆく船をじっと見送っている春日傘の女性。もしも今、声を限りに彼の名を呼んだとしても、その声はもう船までは届かないでしょう。

 清楚な春日傘に隠れたその表情は、こちらからは見えません。遠くなりゆく船を、立ち尽くしたまま、ただただ見送っている静かな春日傘があるだけです。

[季語] 春日傘
[季節] 春


風船をつけて戻りし旅鞄

 帰路の途中で誰かにもらったのでしょう。鞄に風船をつけて戻ってきた旅人。ふわりふわりとゆったり楽しげに浮いている風船に、その旅がとても楽しいものであったことやその人の機嫌のよさが現れているよう。きっと、のんびり麗らかで心弾むような、とびきりの春の旅だったに違いありません。

[季語] 風船
[季節] 春


ざざ降りの後の青空ふきのたう

 どしゃ降りとなればなるほど、その後の青空は美しいものです。どれほど激しくても、降り止まない雨はありません。そして、その後には必ず爽快な青空が現れるのです。

 激しい雨が洗っていった大地に、春の訪れを告げる小さなふきのとうを見つけました。冷たく厳しい冬の後にも、必ず春は訪れるのです。

[季語] ふきのたう(ふきのとう)
[季節] 春


梅匂ふ好きと嫌ひの境目に

 「春愁」という言葉もあるとおり、春になると、気持ちが少し不安定になります。その人のことをとても好きなのに、ときに大嫌いだと思うことも。好きなのか、それとも嫌いなのか、自分の気持ちがわからない……。

 梅の花の香りは、とても鮮烈でいて、どこか眩惑(げんわく)的。梅の香のマジックに、揺れる女心です。

[季語] 梅
[季節] 春




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