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[English]
夕紅葉少し汚れし男足袋 (ゆうもみじすこしよごれしおとこたび)
美しい紅葉に夕暮れがせまり始めたころ、その男性が履いていた足袋が少し汚れていることに気付きました。一日を働き終えようとしている男性の足袋の汚れです。
男性の和服姿はとても艶があるものです。そんな和服を着馴れた男性の、足袋についた少しの汚れ。そこから、その人が過ごした優雅でいて多忙な一日が見えてくるよ
うです。
[季語] 夕紅葉
[季節] 秋
萩こぼる障子いちまい閉め残し (はぎこぼるしょうじいちまいしめのこし)
障子を一枚閉め残した外側の庭に、ほろほろと萩がこぼれています。閉め残した障子は、見事に咲いた萩を見るためなのか、あるいはその障子の内側にあるこぼれるような状況を煽るためなのか……。
明るい秋の陽の中に美しくこぼれる萩、そして障子の白さを挟んだ部屋の内側の仄暗さ。その暗い部屋の中では、こぼれるような情感があるのかもしれません。
[季語] 萩こぼる
[季節] 秋
紅葉明りに見せ合ひて恋みくじ (もみじあかりにみせあいてこいみくじ)
美しく色づいた紅葉の下で、引いたばかりの恋みくじを見せ合っている女性たち。互いの恋みくじを読みながら、喜び合ったり、落ち込んだり……。
燃えるような紅葉の赤や黄色が、開いた恋みくじを、女性たちを照らしています。ほんのり赤く差し込む紅葉明りは、まるで彼女らの恋心のようにも。ちょっぴり華やいだ京都の旅のワンシーンです。
[季語] 紅葉明り
[季節] 秋
飛石に従ふことも菊日和 (とびいしにしたがうこともきくびより)
料亭や日本庭園にしつられられた飛石を、ひとつひとつ順に踏みながら歩いています。和服を着ているときは特に、飛石どおりに歩いていくのが一番美しく、歩きやすいものです。
日本の秋を代表する花、菊。気高く、美しく咲き揃る菊の花のために賜ったかのような、きりりと澄んだ秋晴れの一日。凛と引き締まった菊日和の空気の中を、しとやかに飛石に従いながら歩くてゆく緊張感……。
その先には、少しあらたまった慶びの席が待っているのかもしれません。
[季語] 菊日和
[季節] 秋
逢へぬ日を重ねて古都の月あかし
愛しい人に逢えない時間がしばらく続いた頃、ふっと見上げた京都の月がことのほか赤く感じられました。まるで、その人への募る恋慕を映しているかのように……。
かつて日本の婚姻形態は、男性が女性の元へ通う“通い婚”でした。どれほど逢いたいと願っても、自分の意思では愛しい人に逢うことさえできなかった古(いにしえ)の女性たち。逢えない夫を、恋人を想うとき、彼女たちもこうして月を仰いだことでしょう。
一千年の昔より数多くの恋を育んできた古都・京都。古より重なる数々の恋の想いが、京都の月をより赤く染めているのかもしれません。
[季語] 月
[季節] 秋
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