黛まどか「17文字の詩」タイトルカット



[English]

土恋し空恋し髪乾くまで
(つちこいしそらこいしかみかわくまで)

 シャンプーを終えた後、夕風に吹かれながら髪が乾くのを待っています。小さな庭にはささやかなガーデニング。もうすぐ咲きそうな花にかがんでみたり、ふっと空を見上げたり……。

 髪が乾くまでのほんの短いひととき、土や空に親しみながら、心穏やかに過ごしている夕べです。

[季語] 土恋し
[季節] 春


山笑ふ押しの一手も技のうち
(やまわらうおしのいってもわざのうち)

 目的を遂げるため、ただひたすら自分の意思を押し通す“押しの一手”。「技」とは呼ぶにはあまりにもストレートな手段ですが、押しの一手で押し切られると、意外と相手の手に落ちてしまうことも多々あります。

 芽吹いたばかりの木々の芽や山桜などで淡く染まった春の山の様子を、季語では「山笑ふ」と言います。計算や根回しなどの索もなく、不器用にも思える押しの一手のアプローチ。春の山がほのぼのと見守っています。

[季語] 山笑ふ
[季節] 春


花を来て月に別るる宴かな
(はなをきてつきにわかるるうたげかな)

 花月夜の宴です。誰もが花の下を通って集い、宴の果てた後は美しい月の下を帰ってゆきました。

 花見の宴といえば、近頃では花も愛でず、ただ花の下で酔っぱらって騒いでいる人々が多いもの。しかし、せっかくの美しい花や月です。その風情をわかりあえる人々とほろ酔いほどのお酒でゆっくり会話を楽しみ、歌や句を詠み合うような宴をしたいもの。

 そんな宴は、そこで詠まれた歌や句とともに、いつまで も心地よく人々の心に残り続けてゆくものです。

[季語] 花(桜)
[季節] 春


貸し傘の花びら付けて戻りけり
(かしがさのはなびらつけてもどりけり)

 借りられていった傘が、桜の花びらをつけて戻ってきました。その傘は花の下を歩いてきたのです。花時の雨が降る中、その傘の借り主はどんなひとときを過ごしてきたのでしょうか……。

 貸し傘についた小さな花びらが、花時の華やかさや花の雨の艶やかさ、そして、その傘を借りていった人が過ごした花の下でのひとときを彷彿とさせてくれました。

[季語] 花びら
[季節] 春


また同じタイプに夢中万愚節
(またおなじたいぷにむちゅうばんぐせつ)

 好きになる相手は、いつもどこか共通した部分を持っています。一見まったく違うタイプに見えても、つきあっていくうちに、やはり同じタイプだったと気付くことも。だけど、恋とはきっとそういうものなのでしょう。

 「万愚節」とは4月1日のエイプリルフールのこと。それが恋のトリックだったとしても、恋は盲目。気付けばやっぱり同じタイプの人に夢中になっているのです。

[季語] 万愚節
[季節] 春




Main PageBacknumber Menu