黛まどか「17文字の詩」タイトルカット



[English]

月下美人ひとの気配に開きをり
(げっかびじんひとのけはいにひらきをり)

 月下美人の蕾の近くを人が通りかかった時、ゆっくりと花が開き始めました。まる で人の気配に気づいて花開いたかのように……。

 月下美人は夕方に花を開き、翌朝には萎んでしまう一夜きりの花。どの花にも勝る ほどの美しさでありながら、中には誰の目にも触れることなく萎んでゆく花もあるで しょう。月下美人はその美しい姿を一人でも多くの誰かに見て欲しかったのかもしれ ません。

[季語] 月下美人
[季節] 夏


夜光虫もう帰らねば帰らねば
(やこうちゅうもうかえらねばかえらねば)

 恋しい人と二人で夜の浜辺を訪れています。その夜の海は、夜光虫が美しく輝き、 とてもロマンチックなムード。夜も更け、帰らなければいけない時間が近づき、「も う帰らなければいけない、もう帰らなければいけない…」と思ってはいるのですが、 なかなかその場を離れることができないのです。

[季語] 夜光虫
[季節] 夏


夏料理風添へられて運ばるる
(なつりょうりかぜそえられてはこばるる)

 涼やかな風と一緒に夏料理が運ばれてきました。夏料理は料理そのものがひんやり冷たいばかりでなく、ガラスの器に氷片を敷き詰めたり、緑の草葉をあしらったり、目にも涼しげに映る工夫がされています。夏料理と共に吹いてきた風は、あたかも料理の涼しさを引き立てる演出の一つのようでした。

[季語] 夏料理
[季節] 夏


今しがたまで待つてゐし白日傘
(いましがたまでまっていししろひがさ)

 白日傘をさし、誰かをずっと待っていた女性。しかし、待ち人はついに現れなかったのか、たった今まで待っていたのに、気づけば静かに立ち去っていました。

 この約束を心待ちにしていた彼女の一途さや純粋さ、期待感の表れのようだった真っ白な日傘。そして、その思いを潔く断ち切って去っていった白日傘。彼女が去った後には、寂しさを漂わせた白日傘の残像がいつまでも残っているように思えました。

[季語] 白日傘
[季節] 夏


結ばれぬ二人と見たるボートかな
(むすばれぬふたりとみたるぼーとかな)

 湖や河畔に行くと、二人で仲良くボートに乗るカップルの姿を見かけます。一見、 幸せの只中にいるように見えるカップルですが、中には訳あって成就することのない 恋をしている二人もいるものです。

 その二人もきっとそうなのでしょう。だけど、そのことを互いに知っているからこ そ、二人で過ごせる今を精一杯楽しく過ごそうとしているのかもしれません。

[季語] ボート
[季節] 夏




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