黛まどか「17文字の詩」タイトルカット



[English]

湯ざめしてやつぱり好きと思ふなり

 “湯ざめ”とは、冬の夜、入浴であたためた体がすっかり冷えてしまうこと。それと同時に、気持ちもどこか白々としてゆくものです。

 さて、髪を洗いながら、バスタブに身を伸ばしながら、好きな彼のことを考えています。だけど、恋をしているからとはいえ、100%好きという気持ちはあり得ませんし、バラ色の日々ばかりでもありません。最近ちょっぴり冷たいな、ああいうところ嫌いだな、いっそもう別れちゃおうかな……。不安や不満で揺れる気持ちを抱えたまま、バスルームを出て数十分。スーッと体が冷えたころ、一番素直な気持ちに気付いたのです。

 どんなに揺れても、恋をしているときの答えは一つ。スキ…キライ…スキ…キライ…そして最後は“好き”で終わる花占いのように。

[季語] 湯ざめ
[季節] 冬


冬銀河プロポーズとはこんなもの

 女性にとって、プロポーズされる瞬間というのは人生のビッグイベント。私も幼いころから、恋を告白されるときや、好きな人に「結婚してください」と言われる瞬間とはどんなものだろう……と、あれこれロマンチックな夢を思い描いたものです。

 ある冬の夜、ついに私にもプロポーズされる瞬間がやってきました。しかし、それはあまりにもさりげなく、あっけなく、想像していたようにロマンチックでも、ドラマチックでもありません。きっと、それほどドラマチックなプロポーズなど、実際にはほとんどないのでしょう。あまりにロマンチックな夢を描き過ぎていたためなのか、ちょっぴり期待外れだったプロポーズ。夜空に広がる冬銀河は、とてもとても美しかったのですが……。

[季語] 冬銀河
[季節] 冬


雪焼の私の知らぬ十日間

 10日ぶりにスキーから戻ってきた恋人は、真っ黒に雪焼けしていました。この10日間、彼がどんな日々を過ごしていたのか、私にはまったくわかりません。彼が訪れていた町はどんな風景だったのかしら? どんな仲間と一緒だったのかしら? まさか、ステキな女性と知り合ったりしていない? 彼にとって、その10日間がとても楽しく充実した日々であったことは、そのまぶしいような雪焼けの笑顔からありありと伝わってきます。

 そんな彼の雪焼けが、ちょっぴりうらやましくもあり、ちょっぴり寂しくもあり、そしてどこかジェラシーや不安さえも感じている自分。

 どうしてそんなに楽しそうに笑えるの? 私が一緒ではなかったのに……。

[季語] 雪焼
[季節] 冬


春隣背中合はせに空眺め

 長かった冬ももう終わり。春がすぐそこまでやってきている土手に恋人と訪れました。春は期待に満ちた季節です。春になればあれをしよう、これをしよう、あれが始まる、これが始まる……。背中合わせに座って、別々の空を眺めながら、春への思いをそれぞれに巡らせている私たち。

 恋人同士とはいえ、2人は別々の人間。違った夢や考えを持つのはとても当たり前のことです。2人で一緒に同じ夢を見ることもすてきですが、それぞれがそれぞれの夢を持ち、その夢をお互いに尊重しあえる関係はもっとすてきなのではないでしょうか。触れ合わせた背中は、ちゃんとお互いのぬくもりを感じているのですから。

[季語] 春隣
[季節] 冬



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