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[English]
ネプチューンの眼差しを背に波乗す
サーファーはいつも沖に背を向けて波乗りをしています。背後にあるのは、無限大の海だけ。無限大の空間を背負っているとはどういう気分なのでしょう。恐怖や不安などは感じないのでしょうか、背に負った海から何物かのまなざしを感じることはないのでしょうか……。サーファーを見ながら、私はときどきそんなことを考えるのです。
ネプチューンはローマ神話の海神。目の前の浜辺にはいとしい恋人、背にはネプチューンのまなざし……。海を愛するサーファーたちにとって、背に海の神様のまなざしを感じられるとすれば、とても幸せなことでしょう。ただしそれは、ネプチューンのご機嫌次第。守られているまなざしなのかもしれませんが、あまりにすてきな青年だから命を狙っているまなざしなのかも……。
[季語] 波乗
[季節] 夏
湯湿りの髪をどさりと夏畳
畳の上に体を投げ出したときの開放感は、日本人ならだれもがご存じのことでしょう。しかも、一日の汗や疲れを洗い流し、サッパリ気持ちいい湯上がりの体を思いきり畳に伸ばしたときの気持ち良さといったら……。
入浴中まとめていた髪をバサリとほどき、まだ湿ったままの髪とともに、ごろりと大胆に寝ころんだ夏畳の上。湯上がりのほてった体に伝わるひんやりと冷たい畳の清涼感、すだれ越しに吹いてくる夜風の涼しさ……。
豊かな黒髪を畳の上に広げ、浴衣や薄いサマードレスだけをまとった姿で畳に体をあずけた湯上がりの女性に、日本女性ならではの健康的な艶も感じられます。
[季語] 夏畳
[季節] 夏
ヨット来て祭の中に舫ひけり
クルージングの途中、私たちが乗ったヨットが着岸した港町は、偶然にも祭の真っ最中でした。極彩色の祭飾りや祭提灯に彩られた街角、にぎやかな笛や太鼓の音、高揚した人々の笑顔……。真っ青な海原と波音だけに包まれていたさきほどまでの静かな海の世界から、突然飛び込んでしまった華やかな地上の世界。ヨットが港に着いた瞬間は、まるで異次元へ来てしまったのかと思うほどの戸惑いと驚きを覚えたものでした。
しかし、その戸惑いもほんの一瞬。祭ムードにわき返る港にヨットを舫った瞬間、ヨットに乗っていた私たちもまた一人の祭人となっていったのです。
[季語] ヨット、祭
[季節] 夏
夜光虫いつかふたりとなつてゐし
ヨット仲間たちとクルージングに出かけたある夏の夜のことです。ヨットを沖に止め、甲板で潮風に吹かれながら、皆でいつまでもおしゃべりに興じていました。しかし夜も更けていくうち、1人、2人とキャビンに下りて行き始め、気がつくと甲板には意中の彼と2人きり……。海面には、美しく輝く夜光虫。これは神様がプレゼントしてくれた2人きりの時間なのかもしれないと、とてもロマンチックな気分になったことを覚えています。
キャンプや合宿などに行ったときにも、夜、気がつくと大好きな人と2人きりになっていたということがあります。思いも寄らず2人きりになれた喜びとトキメキ。うれしさと戸惑いが半々のこんな瞬間を、皆さんも一度は経験したことがあるのではありませんか?
[季語] 夜光虫
[季節] 夏
真夜中を来し助手席に薔薇の束
真夜中に突然訪れた恋人。いつもは私の指定席であるサイドシートに、大きなバラの花束を乗せて……。私の誕生日でも、2人の記念日でもない日に、突然、それも深夜にバラの花束のプレゼントをして、私を驚かせよう としていたのです。
この思いがけないプレゼントに、私が喜んだことは言うまでもありませんが、助手席に美しいバラの花束を乗せ、いとしい恋人の喜ぶ顔を、とびきりの笑顔を想像しながら愛車のハンドルを握っていた瞬間は、彼にとっても最高に幸せなひとときだったに違いありません。
[季語] 薔薇
[季節] 夏
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