黛まどか「17文字の詩」タイトルカット



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風薫る襟ぐり広く婚衣装

 結婚するときはこんな花嫁衣装が着たいな……と、女性ならきっと一度は夢に描くものでしょう。街角のウインドーや雑誌でウエディングドレスを見かけると、嫁ぐ予定はなくても、つい目が留まってしまうものです。

 風薫る5月のある日、偶然見かけた花嫁のウエディングドレスは、襟まわりを大きく開けたちょっぴり大胆なデザインでした。広く開いた襟ぐりからは、花嫁の輝くように白い肌や美しい鎖骨が覗き、とても健康的。なんだか、花嫁のにおうような若さと美しさの象徴のようです。

[季語] 風薫る
[季節] 夏


新緑やむかしテニスに結ぶ恋

 日本を代表する避暑地、軽井沢。現在の天皇陛下と皇后美智子さまも、かつてこの軽井沢でテニスを通して恋を育んだと聞きます。

 海に始まる恋は、ひと夏の思い出とともに終わってしまいそうな、どこかせつな的な感もありますが、高原に始まる恋は清潔感にあふれ、ゆっくり時間をかけて大切に育てられていくような気がします。

 明るい初夏の日差し、澄み切った空気、鳥たちのさえずり、そして目覚めたばかりのみずみずしい若葉のみどり……。すがすがしい新緑の軽井沢で、テニスボールを追いながら、流した汗をぬぐいながら、いくつの恋が芽生え、実っていったのでしょう。

[季語] 新緑
[季節] 夏


初夏の君を捉へしファインダー

 すがすがしい5月の風に誘われ、海へ、高原へとドライブに出かける恋人たち。新しくフィルムを入れたばかりのカメラで、彼が真っ先に写したのは、海でも、山でもなく、いとしい彼女の姿。

 きらめくような初夏の日差しを浴びて、貝殻を拾ったり、波と戯れたり、草花を摘んだり……と、子供のように無邪気にはしゃぐ彼女の姿でした。振り向きざまの無防備な笑顔も、少女のようなふくれっ面も、愁いを含んだ横顔も、彼のファインダーが捕らえた彼女の一瞬一瞬の表情は、心を許した彼の前だからこそ見せる彼女の一面、彼だけが知っている彼女の最高の表情なのです。

[季語] 初夏
[季節] 夏


改札で父が手を振る花みかん

 私のふるさと、神奈川県湯河原はみかんの産地。5月も中旬になると、白くかれんなみかんの花が一斉に咲き誇り、甘い香りを街中に漂わせます。

 花みかんの季節になると、不思議と必ず一度はふるさとへ帰る機会に恵まれます。私が帰省するときは必ず、湯河原駅まで迎えにきてくれる父。そして、私の姿を見つけると、人目もはばからず「まどか!」と呼びながら手を振ってくれる父。花みかんの香りの中で、父の姿を見つけると、故郷に帰ってきた……という気持ちでいっぱいになります。私にとって、花みかんと父の姿はふるさとの象徴なのです。

[季語] 花みかん
[季節] 夏


恋はじまつてゐる香水を替へて

 新しいことを始めるとき、新しい気分になりたいとき、女性は髪形を変えたり、部屋の模様替えをしたりします。香水を替えるということも、その一つ。新しい香りをまとった自分は、少しだけ違う自分に、新しい自分になれたような気がするのです。

 新しい自分になるために、封を切った新しい香水。その瞬間、ふっと脳裏をよぎった男性の姿。彼はこの香に気付いてくれるかしら、振り向いてくれるかしら……。この香りは私を魅力的に見せてくれるかしら……。

 昨日とは違う、恋をしている自分。新しい恋物語のプロローグのように、香水が甘く艶やかに香っています。

[季語] 香水
[季節] 夏



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