黛まどか「17文字の詩」タイトルカット



[English]

春一番あしたの私連れてくる

 春は、別れと出会いの季節でもあり、自分自身も生まれ変われるような期待感や予感がします。もっと積極的になりたいとか、わがままを直したいとか、ふだんから意識していてもなかなか変えられない自分の性格や欠点も、春になると変えられそうな気がしませんか?
 「春一番」は、立春以降最初に吹く強い南風。この風が吹くと、春がやってきたことを実感するもの。夢に向かって頑張っている自分、すてきな恋をしている自分……。これからの私は、きっととても輝いているはず。なんだか春一番が、春という季節が、昨日までとは違う新しい自分を連れてきてくれるような気がするのです。

[季語] 春一番
[季節] 春


今日違ふひとの跼める菫かな

 毎日同じ場所に可憐な花を咲かせている、一輪の菫(スミレ)。そんな小さなスミレを旅人や子供たちが見つけては、しばらく跼(せぐく)んで愛で、そして通り過ぎていきます。
 人間にとっては一度きりの出会いかもしれませんが、スミレにとっては昨日も、今日も、同じように自分を見つけてはかがんでゆく人間との出会いの連続。
 数日で果ててしまう小さな命ですが、通りすがりのたくさんの人々の目を楽しませ、心を和ませるスミレ。この一輪のスミレに、どれだけの人々があたたかな春の訪れを感じたことでしょう。

[季語] 菫(スミレ)
[季節] 春


風が好きひな菊が好きアナタが好き

 好きなものがたくさんあります。ふわっと風が吹く瞬間、小さく可憐なひな菊……。だけど何より、一番は、“アナタ”。風の心地よさも、ひな菊のかわいさも、大好きな“アナタ”がいるからこそ。もしも“アナタ”に出会っていなければ、風も、ひな菊もこれほど好きだとは思えなかったかもしれません。
 恋が始まったばかりのころは、目に映るものすべてが輝いて見えるもの。“アナタ”に出会えた喜びが、私に、自然への感謝の気持ちや、ほんの小さな生命に対する愛情も教えてくれたのです。

[季語] ひな菊
[季節] 春


触れさうなところで覚むる春の夢

 「春眠暁を覚えず」と言われるように、春の眠りはとても心地よいもの。そんな眠りの中で見る春の夢は、ぼんやり淡く、たゆたいものです。
 その日見た春の夢には、ほんわりピンク色のスクリーンの中、大好きな彼が現れました。どちらからともなく手を伸ばし、もう少しで触れ合えるというとき、ふっと夢から覚めました。ちょっぴり甘く、実りそうで実らないはかなさも春の夢……。
 だけど、春の朝は、まるで夢の続きのようなおぼろげな雰囲気。「あれはもしかすると現実だったのでは……」
 さっき見た夢を何度もリフレインしながら、いつまでも夢の余韻を楽しんでいるロマンチックな朝です。

[季語] 春の夢
[季節] 春


ふらここや恋を忘るるための恋

 終わった恋を忘れるには次の恋をするのが一番いいと言われます。だけど、心の傷を癒すためにとか、別れた彼へのあてつけのためにとか、無理に始めた恋なんて、空しいばかりでうまくいくはずはありません。
 「ふらここ」とは、子供たちが遊ぶブランコのこと。少し物思いがしたくて、戯れに乗ってみたブランコ。ブランコを漕ぎながら、“やっぱり恋を忘れるためには新しい恋をするしかないのかしら…”と考えているのですが、どこか淋しさを隠しきれない私なのです。

[季語] ふらここ(ぶらんこ)
[季節] 春




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