黛まどか「17文字の詩」タイトルカット



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草の花打ち明けられてよりの距離

 友人や仕事仲間、あるいは幼馴染みだと思っていた男性から、突然愛の告白をされたという経験を持つ女性は少なくないでしょう。それまではフランクにつきあってこられた男性なのに、打ち明けられてしまった瞬間から、それまでとは違う不自然な距離ができてしまって……。

 男女が親しくしているからといって、それが必ず恋愛という感情に結び付くものではありません。日本には「言わぬが花」という言葉がありますが、恋人としてうまくいく関係なのか、友人のままでいた方がいいのか……好きだけどあえて口にしない、それで保たれる関係もあるのです。

 秋になると、野山や道端の多くの草が花をつけます。どれも決して華やかな花ではありませんが、その姿はとても素朴でかれん。「友人」や「幼馴染み」という関係に華やかさはないかもしれませんが、恋人とは違う、草の花のような安ど感を感じられると思うのですが……。

[季語] 草の花
[季節] 秋


秋の浜座して遠のくものばかり

 秋の浜辺に腰をおろし、しばらく波を見ていました。人けの絶えた秋の浜辺には、ときどき犬を連れた人が通ったり、ジョギングの人が行き過ぎたり、老夫婦が杖をつきながら散歩をしていたりするだけ。船は遠くへ旅立って行き、雲も風も人もみな、自分ひとりをそこに残し、遠くへと離れていってしまうように思えます。

 過ぎ去った夏を思い返してみても、思い出すのは、離れていったものや手放した恋、そして、もう会えない人たちばかり。夏の間には、手に入れたものと失ったもの、その両方があるはずなのに、失ったものばかりが思い出されるのは、やはり秋という季節のせいなのでしょうか。

 なんだか、自分だけがそこに取り残されてしまうような寂しさの漂う秋の浜辺です。

[季語] 秋の浜
[季節] 秋


紅葉且つ散る再会の石畳

 「紅葉且つ散る」とは、一方では紅葉しつつ、また一方では紅葉が散っているという、二つの状態を同時に表した秋の季語です。

 ある秋の一日、ヨーロッパの街角で懐かしい知人との再会を果たしました。それは、何百年、何千年もの歴史を持つ古い古い石畳の上。あるものは赤く色付き、あるものは石畳の上に散っていく街路樹の紅葉が、私たちの再会を美しく演出してくれているようです。

 この古い道の上で、これまでどれほどの恋人や家族、仲間たちが出会いと別れを繰り返し、どれほどのドラマを繰り広げてきたのでしょうか。紅葉しながらも石畳に散ってゆく美しい紅葉が、そのたくさんのドラマを象徴しているような気がしました。

[季語] 紅葉且つ散る
[季節] 秋


弟に文を持たせて秋祭

 遊園地もディスコも何もない小さな町に暮らす少女たちにとって、秋祭りや花火大会はときめきのイベント。祭りの灯の下で会うあこがれの人は、学校の制服を着ているときとはまた違い、さらにすてきに見えるものです。

 秋祭りのその日、なんとかして一緒に縁日に行きたいと思っているあこがれの彼。うまくいかなくても、せめて思いを伝えたい。幼い弟をキューピッド代わりに使い、その人への手紙を託しました。

 「お姉ちゃんがおもちゃを買ってあげるから、この手紙をあの人に渡してきて」

 おもちゃの一言に、一目散に駆け出してゆく弟。姉の恋心などにはまったく気付いていない弟の小さな背中を、ちょっぴり心配そうに見つめる少女です。

[季語] 秋祭
[季節] 秋




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