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《10》

 デパートの屋上でも、遊園地でも、夏祭りでも、私はいつも赤い風船を選んだ。父は必ず風船の糸を輪にして持たせてくれた。だが、家まで持ち帰ったことはほとんどない。いつの間にか手をすり抜けた。そしていつからだろう、泣きじゃくることもなくなった。あきらめることを覚えた。Kとのことも、いつかは手をすり抜けるという予感があったのかもしれない。

<撮影・金谷喜久>

黛まどか「長崎恋物語」メーンページ