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03年オレを見てくれ

  【オリックス】  吉井理人(投 手)

 大リーグを経て6年ぶりに日本球界に復帰したオリックス吉井理人投手(37)が、沖縄・宮古島キャンプに活気を与えている。楽しみながら練習する姿が若手を引っ張り、グラウンド外ではパソコンを駆使して音楽を聴き、趣味に打ち込む。日米で豊富な経験をしてきたベテランは「いつ終わるかわからない人生。どんなことでも楽しまなければ」と独自の野球観、人生観を語った。

吉井理人
今キャンプ初の打撃投手を務めた後、トレーニングで汗を流す吉井

  練習も趣味も楽しんでやらなきゃ

 4月で38歳になる吉井は、自分のことをよく「もうおっちゃんやからな…」と言ってため息をつき、笑いを誘う。だがキャンプでの練習風景に「おっさんらしさ」はみじんもない。近鉄時代からの同僚佐野を相手に、メジャーリーガーの物まねなどを交えながら練習する姿は、野球を始めたばかりの子供のような無邪気ささえ感じさせる。

 吉井 5年間アメリカへ行って、何が変わったといったら、練習でも何でも楽しんでやるという接し方でしょうね。学校でも同じじゃないですか。数学イヤやなと思ったら本当にイヤだけど、同じやるんやったら楽しんでやってやれと思ったら、身につき方も違ってくると思うんですよ。

 変わった点といえば「目標は優勝」と言い切るようになった。近鉄、ヤクルト時代は、あからさまに「優勝」と語る選手ではなかった記憶があるが。

 吉井 メジャーの選手は普段は個人個人バラバラのように見えて、優勝に向けては大変な集中力で一丸になる。そんな姿を見てきたからでしょうかね。勝つことへの執念は、本当にすさまじい。勝てば生活が潤う、という基本的な考えがあるからでしょう。

 メジャーでの経験を含め、吉井の話題は豊富だ。本業以外でも、競馬、音楽と趣味の幅が広い。箕島高時代には、ビートルズの曲を弾きたいばかりに、みかん摘みのアルバイトをしてギターを買ったという。

 何でも極めようとする意欲のもとは?

 吉井 この年齢になってようやく気付いたことなんですが、自分は他の人より好奇心が強いのかなと思うようになりました。「好奇心こそが人間の成長を助けてくれる」という言葉は、ぼくが尊敬するアインシュタインが語った言葉です。その通りやと思うし、いい言葉だなと思う。好奇心が強いからこそ何でも知りたいし、うまくなりたいなと思うんです。

吉井の年度別成績
所属 試合 勝利 敗戦

投球回 三振



85 近 鉄 2 0 1 0 3 1 7 21.00
86 2 0 0 0 2 1/3 2 6 23.14
87 13 2 1 0 36 23 19 4.75
88 50 10 2 24 80 1/3 44 24 2.69
89 47 5 5 20 84 1/3 44 28 2.99
90 45 8 9 15 74 1/3 55 28 3.39
91 21 2 1 2 26 1/3 13 10 3.42
92 9 1 0 0 11 2/3 4 3 2.31
93 22 5 5 0 104 2/3 66 31 2.67
94 21 7 7 0 97 42 59 5.47
95 ヤクルト 25 10 7 0 147 1/3 91 51 3.12
96 25 10 7 0 180 1/3 145 65 3.24
97 28 13 6 0 174 1/3 104 58 2.99
日本通算 310 73 51 61 1022 634 389 3.43
98 メッツ 29 6 8 0 171 2/3 117 75 3.93
99 31 12 8 0 174 105 85 4.40
00 ロッキーズ 29 6 15 0 167 1/3 88 109 5.86
01 エクスポズ 42 4 7 0 113 63 60 4.78
02 31 4 9 0 131 1/3 74 60 4.11
メジャー通算 162 32 47 0 757 1/3 447 389 4.62
 アインシュタイン?

 吉井 昨年、自分にとって忘れられないこともあった。4月に、同い年の親友が脳内出血で急死したんです。小、中と野球を始める前からの友達で、中学時代は同じ陸上部で、ずっと連絡を取り合う親友だった。それが昨年の春、突然いなくなってしまった。ぼくはシンシナティへの遠征中でお葬式にも行けなくて、試合からの帰りのバスの中でずっと人間が死ぬことについて考えていた。いつ死ぬかもわからない、いつ自分の順番が来るかもしれない。それだったら毎日、瞬間瞬間を楽しんで生きなあかんやないかと思うようになったんです。

 楽しいと思うからこそ、より真剣に野球に打ち込める。

 吉井 毎年毎年、よりいっそう野球が好きになる。大好きな野球をできる限り長く続けたいし、今年も野球をやれる環境をくれたオリックスには本当に感謝しています。

 ただ、5年の不在の間に、日本の野球界を取り巻く情勢は厳しくなった。スター選手はメジャーに行き、社会人では名門の休廃部が続いている。

 吉井 今の子供たちは衛星中継などを通じて、イチロー(マリナーズ)や、これからは松井(ヤンキース)の活躍を見るはず。それで野球に興味を持って、将来必ず野球に帰ってきてくれるはずとぼくは信じているんです。それでも子供が野球をやれる場所がないのは、つらいなあ。原っぱでは野球やったらあかんって言われるでしょ。それから社会人のことを言えば、あくまでもぼく個人の意見ですが、オリンピックの舞台という社会人選手の夢をもっと大事にしてあげなければと思う。希望をなくして社会人野球が衰退すれば、大学、高校と日本球界を支える組織がだめになって行く。

 あらためて、吉井投手個人の目標を聞かせてほしい。

 吉井 世界制覇。ワールドシリーズ優勝です。ヤクルトで2度日本一になって、日本の野球の頂点は経験したけど、世界の頂点も知りたい。Wシリーズで優勝して、あのでっかい優勝リングを指にはめて歩きたいんですよ。
【構成・堀まどか/撮影・黒河謙一】

吉井理人(よしい・まさと)1965年(昭和40年)4月20日、和歌山県生まれ。箕島(和歌山)で82、83年夏に甲子園に出場し、83年ドラフト2位で近鉄入団。88年に最優秀救援投手賞。95年にヤクルトへ移籍し2度日本一に。98年にはFAで大リーグ入り。メッツ、ロッキーズ、エクスポズで5年間で通算32勝47敗。188センチ、95キロ。右投げ右打ち。




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