阪神放出…新天地で再起だ
坪井の転機は突然やってきた。昨年11月初旬、思わぬ知らせが耳に届いた。
坪井 トレードは最初にテレビで知ったんですよ。その日はゴルフだったんで、早起きしてて、それでテレビつけたら(自分のニュースを)やってた。それはまあ、今までにないショックを受けましたね。ふざけんなっていうか、ええ加減にせえよっていう気持ちは正直あったんですけど。その後、すごい仲のいい人とゴルフに行ったんですけど、まあ全然面白くないゴルフでしたよ。
阪神で華々しいデビューを飾ったのは98年。打率3割2分7厘を記録し、2リーグ分裂以降の新人最高打率を更新した。だが最近2年間は故障もあり、急激に出場機会を減らしていた。屈辱の日々に追い打ちをかける「テレビ辞令」。無念さを再起へのエネルギーに変え、坪井はパ・リーグにやってきた。
坪井 観客が少ないことはパ・リーグの選手に吹き込まれましたよね。大きめに覚悟はしてきたんで、ああ言ってた通りやなって。だいぶ雰囲気は違いますけど、僕はこういう方が好きですよ。
気持ちの切り替えが済んだ今は、野球に集中できる環境が心地よくも感じられる。全体練習終了後のマシン、トス打撃は1時間以上に及ぶこともある。
坪井 僕らはやっぱりプロの野球選手ですから。ファンがいるいないとか、球場が広い狭いとか、風が吹いてるとか、そういうのでプレーを変えるようじゃ、やっぱり一流とは言えない。どんな状況においても自分のプレーができるようにしないとっていうのは、すごい意識してやってます。
| 坪井の年度別成績 |
| 年 |
所属 |
試合 |
打数 |
安打 |
本塁打 |
打点 |
打率 |
| 98 |
阪神 |
123 |
413 |
135 |
2 |
21 |
.327 |
| 99 |
〃 |
134 |
530 |
161 |
5 |
43 |
.304 |
| 00 |
〃 |
128 |
489 |
133 |
4 |
32 |
.272 |
| 01 |
〃 |
43 |
128 |
28 |
2 |
11 |
.219 |
| 02 |
〃 |
24 |
68 |
17 |
1 |
6 |
.250 |
| 計 |
|
452 |
1628 |
474 |
14 |
113 |
.291 |
|
ユニホームが変わって気づくこともある。何でも注目される立場から少し離れて自分を冷静に見つめられるようにもなった。
坪井 阪神の時は、僕らは恵まれすぎました。弱くてもすごい応援してくれるし、あぐらをかいてた部分も正直ありましたね。全然活躍してない選手でも新聞やテレビで騒がれるし、勘違いする選手も多いと思います。その点、日本ハムの若手はハングリーですよ。試合に出たい、目立ちたいっていうのがすごいありますから。
周囲は98年のような活躍を期待する。だが坪井は、それを「取り戻す」のではなく「乗り越える」ことだけを考えている。
坪井 あの時は、それなりに誇れる数字だなと思いましたよ。でもその時はその時ですね。1年目を追って野球するなんていうナンセンスなことはしたくない。常に上を向いて、前を見ていきたい。もっとこう、理想のバッティングであったり、理想のプレーがあると信じてますから。同じ数字だったら、僕は多分いやだろうなと思いますよ。
「あの時」を越えなければ満足はできない。越えるには、やはり「あの時」に成し遂げていないことをやるしかない。
坪井 やっぱこのチームで優勝したいって思います。阪神ファンにはいい思いさせられなかったですから。このチームで、このメンバーで、この監督で優勝したい。その中で自分が球場にいるっていうのが目標です。坪井は第2のスタートを切った。その姿には「復活」よりも「挑戦」という言葉が似合う。
【構成・大塚仁/撮影・宇治久裕】