木内幸男監督、甲子園2度目のV
常総学院 甲子園2度目の胴上げは、50歳以上も年の離れた16人が支えた。今大会最年長の69歳。小刻みな投手リレーで逃げ切った木内監督は「高校野球なのに、と批判はあるかもしれませんが優勝戦ですからやらせてください」。お立ち台でも笑顔は絶えなかった。
取手二監督時代の84年夏に続く2度目の全国制覇。異なる2校での優勝は65年夏に三池工(福岡)70年夏に東海大相模(神奈川)の原貢氏以来。その強さの秘けつは「観察力」と「その試合に適した選手の起用」だという。
この日も仙台育英の守備練習を見て、バント攻撃で揺さぶった。スタメンは折り込み広告の裏に書き留める。「あれこれ考えていると、(紙が)こんなになっちゃうんだよ」と手で示す紙の厚さは5センチほど。相手チームだけでなく自軍の観察も怠らない。
理想は池田(徳島)の攻撃野球。「『木内マジック』と人はいうけど、そんなもんねぇ。毎年やりたい野球は違うからね」と笑い飛ばし、常総学院の副理事長を務めるも「グラウンドが仕事場」と言い切る。
「若いころは理屈をつけて野球をやっていた。今は子供たちと野球をするのが楽しい。かわいくてしょうがないよ」。選手の話になると目じりが自然と下がる。敬語を使っていては本音が聞き出せないと、対等な立場でコミュニケーションを取ってきた。
ポケットマネーで携帯カイロを買い込んだり、筋力トレーニングで頑張った選手にはハンバーガー店でごちそうしたりと気配りを忘れない。監督として17年ぶりの全国制覇は、監督と選手の「距離」を縮めて築き上げた信頼関係でつかんだ。
【横山元保】
◆アマ球界の高齢監督 1982年(昭和57年)センバツ大会に出場した明徳(現明徳義塾)の松田監督は、当時76歳で1勝した。甲子園優勝監督では「攻めダルマ」こと蔦監督(池田)が86年春優勝時に62歳。72年春優勝の香椎監督(日大桜丘)は、還暦を迎えたばかりだった。大学野球では明大の島岡監督が89年(平成元)に77歳で死去するまで監督、総監督を務めた。
◆木内幸男(きうち・ゆきお)1931年(昭和6年)7月12日生まれ、茨城県出身。土浦一高では主将を務め、遊撃、中堅としてプレーする。母校の監督を経て、57年に取手二の監督に就任。春夏合わせて6回の甲子園出場を果たし、84年夏に全国制覇を成し遂げた。同年9月に常総学院へ移り、以来春夏合わせて11回甲子園へ導いた。現在は副理事長。趣味は釣り、ゴルフ。家族は千代子夫人。
芳賀崇、痛恨7失点 東北勢の初Vならず
仙台育英 大旗は、またしても白河の関を越えなかった。仙台育英が1989年(平成元)夏以来12年ぶりに挑んだ決勝の舞台は、東北勢で初の全国制覇がかかった一戦。終盤の猛攻で1点差まで詰め寄りながら、あと1歩及ばなかった。5試合すべてを1人で投げ抜いたエース芳賀が「優勝旗を持ち帰るという、皆さんの期待にこたえられなかった」とチームの思いを代弁した。
ここまで無失策だった野手陣が、初回、5回といずれも失点につながる失策。準決勝の宜野座戦で14奪三振と好投した芳賀も、3暴投に悪送球でリズムに乗れず、中盤までに6点を失った。佐々木順一朗監督(41)は前日3日夜、平常心を保つため「勝利へゲンのいい夕食を出したい」というホテル側の申し出を辞退していたが、期待を背負う重圧は予想以上だった。
それでも打線は4回、菊池の大会2本目の左翼ソロをはじめ、9回裏には1死二塁から2本の適時打で1点差に詰め寄るなど、最後まで全国制覇への執念を見せつけた。嶋田主将は「力の差より精神面の差だった。必ず夏に戻って再挑戦したい」。今大会を含め、東北勢が決勝で喫した敗戦はいずれも2点差以内。仙台育英の快挙が、新世紀における東北高校野球の可能性を感じさせた。 【山下健二郎】
センバツあらかると
◆決勝両チーム最多安打 両軍28安打は大会最多。これまで最多は1975年(昭和50年)高知―東海大相模(延長13回)、79年浪商―箕島の26安打だった。
◆決勝戦16安打 決勝の1チーム最多は69年三重の17安打で、82年のPL学園と並ぶ2位タイ。
◆3投手でV 決勝戦で投手3人を起用した優勝は大会初。複数投手を起用して優勝した例は8度あったが、いずれも2人だった。
◆準決勝延長勝ちは強い 準決勝で延長戦に勝ったチームは常総学院で19チーム目だが、決勝の成績はこれで14勝5敗(直接対決1度を含む)。
◆最少完封 今大会の完封試合は2回戦の藤代1―0四日市工だけ。完封1試合は最少で24年(参加8校)25年(12校)50年(16校)に次いで51年ぶり。
◆雨天延期なし 今大会は昨年に続いて雨天中止による延期がなかった。2大会続けて延期なしは52、53年以来48年ぶり。
◆芳賀が48奪三振 芳賀(仙台育英)が今大会48個の三振を奪い、センバツ大会ランクでは33年吉田(中京商)53年太田(伏見)71年渡部(日大三)に並ぶ8位タイ。1位は73年江川(作新学院)の60個。
◆6得点で準優勝 決勝で6点以上奪って敗れたのは79年の箕島8―7浪商以来2度目。
◆茨城が宮城に初勝利 過去の茨城対宮城は茨城県勢が夏の大会で2敗、春は今大会の藤代が仙台育英に敗れ計3連敗していた。
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