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歌手・山川豊(43)
車のキズ僕が直します
【8月8日紙面より】
「これを見てください」。山川豊(43)は顔を近づけると、いきなり左目をグイッとむいた。白目の部分に直径5ミリのシミのような斑点。自動車整備工を目指して修業時代の爆発事故の後遺症だ。
「溶接の実習をやっている時にタンクが爆発しましてね。大ごう音ととも爆風、火花に身を包まれて、死んだ! と思いました。タンクのガスを抜くのを忘れて溶接をしたのが間違いのもとでした。命を落としたり、大ケガをしなかっただけましかもしれません」。 山川の歌手以外のもうひとつの本業といえばボクシングのC級ライセンス(4回戦)やトレーナーライセンスの取得が有名。今も時間をつくってジム通いを続ける。幼いころから父親に競輪選手かボクサーになれ、そうでなければ手に職をつけろと口グセのように言われたものだ。中学を卒業した後は自動車整備工になるため、三重県伊勢市の南伊勢総合高等職業訓練学校に進んだ。 「午前中は学科、午後は実習でしたが、鏨(たがね)を切る時はハンマーで手が血だらけになり、先生からは『振りが悪い』とどやされる毎日。溶接をやれば火の粉がパンツの中まで飛び込んできて熱いし、生殖機能に影響すると言われてビビリました」。同校の板金科で2年間学び、車、建築、造船コースの中から車を選択。電極を使うアーク溶接とガス溶接技能の2つの資格収得試験を受け合格した。 「試験は1年に1回、3時間の一発勝負で落ちたら2年間の苦労が水の泡になる。受験者の半分は落ちると聞いていたけど、ギリギリの合格だったようです」。卒業後は鈴鹿市の自動車整備工場に入社するが、仕事が終わった後に歌の練習に打ち込み、2年後に歌手に転身する。 「整備工場は洗車から始まったけど車ばらし、板金などマスターした技術は今でも生かしている。知人の車のキズでも少々のことなら僕が直しているんです。素人にはわからないへこみ、キズも重目か細目か手の感触でどの程度か分かるんです」。車を見て事故車かどうかもすぐわかるそうで、相談されることもしばしばという。 歌手になってさすがにガス溶接技能のライセンスを生かす機会はない。テレビ番組で披露する程度だが、それでもあざやかな溶接技術は周囲を驚かせる。いずれはアート作品に挑戦することも考えている。青春の血と涙、汗の結晶を宝にしている。【小林秀夫】 (写真=車に触れてキズの程度を見分ける山川豊)
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◆山川豊(やまかわ・ゆたか)本名・木村春次(はるじ)。1958年(昭和33年)10月15日、三重県鳥羽市生まれ。81年に「函館本線」で歌手デビュー、新人賞を総ナメ。その後も「しぐれ川」「アメリカ橋」などのヒットを飛ばす。86年以降、NHK「紅白歌合戦」の常連。歌手鳥羽一郎(50)は実兄。最新曲は「わかれ雪」。
◆ガス溶接技能者 溶接作業の中でも活躍の場が広く需要が多い。資格を得るためには労働基準局長が指定する機関で実施する技能講習を修了して修了試験に合格することが必要。問い合わせ先は各都道府県労働基準局安全課、または労働基準監督署、都道府県労働基準協会。東京労働基準局は(電話)03・3814・5311。 工業・化学・技術分野には技術士など高度な資格試験もあるが、ガス溶接技能者以外にも実務経験がなくても目指すことができる資格は多い。市販されている「資格ガイド」などでチェックしたい。
資格には根拠が法律に定められている国家資格、関係する民間団体や組織や有志がその職業に従事する人たちの資質や技能アップを図る民間資格がある。就職や転職の際に職務遂行能力などの客観的な証明になるのが資格だ。
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