【蔚山(韓国)10日=桐越聡、田口潤】谷間の世代が歴史をつくった。U−21(21歳以下)日本代表がタイを破り、初の決勝進出を決めた。前半24分、CKからのチャンスにDF池田昇平(21=清水)が先制ゴール。後半3分にMF鈴木啓太(21=浦和)のミドルシュートで追加点を挙げ、同40分にはFW中山悟志(20=G大阪)の4戦連続ゴールが飛び出し、3−0で圧勝した。日本の決勝進出は大会史上初。メダルを確定させた日本は13日、韓国をPK戦で下したイランと頂点を争う。
若さ、勢いは恐ろしい。わずか半月前まで「谷間の世代」と酷評された男たちが、自分たちの手で歴史をつくった。史上初の決勝進出。今大会初ゴールを決めたMF鈴木は「これで普通の世代と言われるかな。そして(次のW杯のある)2006年になったころには、黄金世代だったと言われたい」と笑顔を見せた。
理想的な攻撃サッカーで勝負を決めた。立ち上がりはタイのスピードにほんろうされる場面もあったが、慌てず耐えてチャンスを待った。前半24分、初めて得たCKから生まれたチャンスを生かした。GKのこぼれ球を池田が押し込み先制。余裕の出た日本は、相手サイドを崩して再三ゴールチャンスをつくった。
後半開始3分には鈴木が25メートルのミドルシュートを決めた。「(小野)伸二さんから、『最近元気がない。もっと勝負して存在感を出せ』と昨日(9日)電話で言われたんです」。普段から師と慕う小野からのアドバイスが生き、貴重な2点目を奪った。終了間際には中山の4試合連続ゴールまで飛び出した。
タイのウィス監督は「うちの守備も強かったが、日本は戦術を持っていた」とうなだれた。準々決勝の中国戦の勝利は終始攻め込まれて、ワンチャンスをものにしたものだった。だが、この日は相手を崩して勝利をつかんだ。普段、U−21代表には辛口の日本代表ジーコ監督からも「5回のチャンスで3点を決めた。心強い。貴重な勝利だ。チームワークに成長が見られる」とたたえられた。
「歴史を動かせ」。試合前のミーティングで、山本監督はホワイトボードにこう書いた。中国戦から中1日の厳しい日程の中で、選手たちは期待通りの動きを見せた。山本監督は「新しい歴史をつくることは大変なこと。たくましくなっている」と話した。
決勝も厳しい戦いになる。イランとは00年のアジアユース1次リーグで対戦し、1−3で完敗している。前回バンコク大会優勝国でもあり、来年のアテネ五輪予選でも強力なライバルになる。山本監督は「五輪を勝ち抜くには、しぶとさ、どん欲さが必要。連戦の中で結果を出すことが、自信につながる。決勝までの2日で調整したい」と前を見据えた。イランに雪辱してアジアの頂点に立てば、間違いなく、谷間の世代は黄金世代に変わる。
★中山4戦連発!得点王へ1差
中山らしい泥臭いゴールだった。2−0で迎えた後半40分、田中達が右サイドへボールを出した瞬間、中山はゴール前に突進した。田中隼の折り返しに、スライディングして突っ込む。低い弾道を描いたボールに伸ばした左足をぶつけて4試合連続の得点。「エースの自覚は?」と聞かれて「そんなのはありません。チーム全体の得点」と少しだけ照れた。
「前半は体が重かったけど、気持ちでカバーした」。シュート数はチーム最多の5本。前半34分にはゴール前の接触プレーで激しく倒れたが「ぼくに激しいマークがくるということは、ほかが空くこと」。プレーは熱くても、頭は冷静だった。
小学生時代は九州大会ベスト8に進出した野球少年。アジア大会代表では最も遅く、中学入学と同時にサッカーを始めた。大学進学を意識していたが、宮崎・鵬翔高3年時のU−18(18歳以下)日本代表のオランダ遠征が転機になった。PSV、アヤックスと対戦し「やりがいのある世界」。そのころ初めてプロに意識が向いた。
負傷のためベンチを温める機会が多い前田(磐田)のようなうまさはない。粗削りなプレーが特徴だ。あだなはゴン。「あこがれは本物の中山(雅史)さん。あれだけ動けるのはすごい」。谷間の世代とやゆされた代表を、中山雅と同じ闘争心あふれるプレーで引っ張ってきた。大会通算4ゴール。イランFWニクバットが同5点でトップだが、決勝は出場停止。中山に得点王の可能性も出てくる
「前から(谷間の世代とか)いろいろと言われていた。見返すじゃないけど、塗り替えることはできたかな。決勝も積極的に狙っていきたい」。伸ばした髪を金髪に染めた「ゴン」は力強く言った。
◆中山悟志(なかやま・さとし)1981年(昭和56年)11月7日、宮崎県生まれ。鵬翔高時代にU−18日本代表としてオランダ遠征を経験。00年G大阪入り。今年5月にはU−21日本代表の一員としてトゥーロン国際大会に出場。3点で得点王に輝いた。身体能力が高く、スピードもある左利きストライカー。183センチ、74キロ。