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【バックナンバー】

<第5回>岡野俊一郎日本サッカー協会会長 トップの胸の内2

単なるイベントで終わらせない

 日本サッカー協会の岡野俊一郎会長(69)が、1年半後に迫った2002年W杯への思いを、さまざまな角度から語った。協会トップとして、サッカー人として、その胸の内を4回にわたって紹介する。第2回は「競技場の地域活用を」。

岡野俊一郎
(おかの・しゅんいちろう)

 1931年(昭和6年)8月28日、東京都生まれ。小石川高から東大文学部卒業。55年に日本代表入り。61年にドイツへコーチ留学。帰国後、日本代表コーチとして、68年メキシコ五輪銅メダル獲得。70〜72年まで代表監督を務めた。74年に日本サッカー協会理事、87年に同副会長、98年(平10)7月に同会長に就任した。90年からは国際オリンピック委員会(IOC)委員としても活躍している。和菓子の老舗(しにせ)・岡埜栄泉社長。妻の千代子さんと2人暮らし。

生活と密着

 W杯の開催はサッカー界だけではなく、日本のスポーツ界、社会にとっても大きな意義があると思うのです。それは、2つの面でいえます。

 1つはソフト。外国から大勢の人が来日する。そこで数々の交流が生まれる。多くの国のスポーツの中心はサッカーです。その国の人々がどういう環境でサッカーに親しんでいるのか。その情報を得ることで、日本のスポーツ界も大きな刺激を受けるはずです。

 もう1つはハードです。なぜ10もの自治体に多大な財政負担を強いてW杯を開催してもらうのか。それは各競技場に地域のコミュニティーセンターになってほしいと考えたからです。だから、協会の人たちの批判も受けましたが私は「施設がなければ、サッカー専用でなくても結構です」と主張したんです。大会後に各地域のスポーツセンターにと考えたからです。

 日本ではスポーツと生活が密着していない。最大の原因は施設がないことにあります。だから10自治体の素晴らしい競技場を、大会後にも地域の人たちのために生かしてほしい。「W杯をやってよかったじゃないか」「サッカーの大会だけど地域のスポーツにとっても大きな遺産を残してくれたよ」と人々が言うようになることが大事なんです。

 21世紀に日本が必要とするのはスポーツ教育だと私は考えています。今までは学校教育、社会教育、家庭教育という3本の柱で教育を支えてきた。特に現在は学校の比重が大きい。しかし、学校の負担分はスポーツが肩代わりできると思うのです。子供たちの健康な体づくりに役立つ。同時に仲間と一緒に生きる心というものを教えられる。そういう方面に競技場を活用してほしいのです。W杯が日本教育にも大きな変革をもたらす、ひとつのきっかけになると思うんです。



2002年W杯国内の開催スタジアム
開催地 スタジアム 収容 完成時期 種別 その他の利用
札幌市 札幌ドーム 42,300 01年5月 兼用 野球との併用
宮城県 宮城スタジアム 50,000 完成済み 兼用 01年国体会場
新潟県 新潟スタジアムビッグスワン 42,300 01年3月 兼用 09年国体会場
茨城県 カシマスタジアム 41,800 01年5月 専用 鹿島のホーム
埼玉県 さいたまスタジアム2002 63,700 01年7月 専用 浦和のホーム
横浜市 横浜国際総合競技場 70,564 完成済み 兼用 横浜のホーム
静岡県 静岡スタジアムエコパ 51,349 01年3月 兼用 03年国体会場
大阪市 長居陸上競技場 50,000 完成済み 兼用 C大阪ホーム
神戸市 神戸ウイングスタジアム 42,000 01年10月 専用 神戸のホーム
大分県 大分ビッグアイ 43,000 01年3月 兼用 08年国体会場


長期スパン

 オーバーな言い方ですけど、長い目で見ればW杯開催は30兆円を超える医療費の削減にもつながるはずです。老いは足腰からくる。脳細胞には手足の刺激が直接いく。だから高齢化社会を迎えるにあたり、中高年の人がスポーツを生活の中で正しくやっていくことが重要になる。健やかに老いを迎えられれば、医療費も削減できるんです。競技場を造ったときに「何百億も投資して回収できるのか」「維持費にいくらかかるのか」という声が出てくる。しかし、もっと長期スパンでスポーツを理解してほしいんです。教育と同じです。成果が出るのは20年、25年後。すぐに結果を求めるのではなく、長い目で見てほしいのです。

 だから、2002W杯を一過性のもので終わらせたくない。単なるイベントで終わらせてはいけないと思うのです。開催の効果をスポーツ界、社会全体に波及させたい。それがW杯を開催する私たちの目標であり責任でもあるのです。(構成=首藤正徳)


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