|
フィギュアスケートのトップ選手に必要な条件として、才能や努力とともに、良きコーチの存在が言われる。昨年12月の全日本選手権で五輪代表に内定した村主章枝(すぐり・ふみえ、21=早大)を指導する佐藤信夫コーチ(60)も、同選手を語る上で欠かせない人物だ。結果より過程の大切さを説くことで知られる。
99年4月から3年目になる。意見の違いで前コーチから離れた村主に頼まれたのがきっかけだった。昨季の4大陸選手権優勝と世界選手権7位、そして五輪代表に導いた。村主は「先生のおかげ」と話すが、当人は「3年で何を変えたかと言われると、あまり変えていない」と平静を装う。
練習中、リンクで滑る貴重な時間をつぶして、30分近く演技について話し合うこともある。「彼女(村主)は経験を積んでいる。(欠点を直すとき)私はこう考える、と言うだけ」。決して強制しない。納得して受け入れるかは本人次第。「変える」よりも「道を示す」。時間をかけても、不安を残さないようにじっくり説明する。
現役時代には、60年スコーバレー、64年インスブルック両五輪に出場した。当時、外国選手との交流は皆無に等しかった。関係者や文献などから世界の情報を収集して練習した。「五輪で見た外国選手は当然、レベルが違った。でも、あの経験は貴重だった」と振り返る。69年に元五輪選手の久美子夫人(55)と結婚、指導者として長女有香さん(28)を94年世界選手権優勝などに導いた。選手、指導者両方の豊富な経験が、言葉に宿る。
「経験が違い過ぎるので、最終的に先生の考えを受け入れます。後から、言われた通りやって良かったと、よく思っています」。村主から揺るぎない信頼を受ける師は、五輪を決めたまな弟子にこんな言葉を贈った。「これは彼女にとって大変な財産になる」。【嶽岡晃樹】
|