|
全競技を通じて、最も注目される選手の1人だろう。長野大会で銀に敗れたミシェル・クワン(21=米国)は、金メダルだけを目指して氷上に現れる。
フィギュアスケートは、米国で特に人気が高い。五輪歴代高視聴率ランクの上位を占める。大会前の注目度も、他競技とは段違いだ。昨年10月、クワンはある“事件”で、地元紙の1面を飾った。
10年間指導を受けた名コーチ、フランク・キャロル氏とたもとを分かったのだ。「スケートの取り組み方に相違があった」。マスコミはこぞって疑問を投げかけた。その後の不振で、限界説も流れた。しかし、本人は「本番は2月だから」と焦らなかった。ライバルのスルツカヤ(ロシア)に敗れても、後輩のヒューズに抜かれても、強制されるスケートから自由を得た代償と割り切っていた。
ジャンプで勝負する選手ではない。手先、足先まで神経の行き届いた美しさが、クワンを世界の女王に導いた。長野五輪は巡り合わせが悪かった。東洋系の肉体は、少女から大人へ変ぼうする時期に重なっていた。芸術性、表現力で負けるはずのない相手に屈した。その後、五輪を最大の目標とは口にしなくなった。
テーマは「for myself」。今月12日、五輪選考会となった全米選手権を大差で制した。5年連続6度目の栄冠。「私だけのために滑った。周囲の人や評論家のためじゃなくて。それがうれしい」。ミス・パーフェクトと呼ばれる完ぺきな演技は、大きな壁を乗り越えてよみがえった。【高宮憲治】
|