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スピードスケート男子長距離の糸川敏彦(27=コクド)が、長いトンネルを抜け出そうとしている。W杯前半3大会を終えた現在、5000、1万メートルのランクで日本勢最高の13位。1つ年上の先輩でエースの白幡圭史を3点上回る91点を獲得し「いいスタートを切れた」と手ごたえをつかんでいる。
北海道・白樺学園高2年だった92年アルベールビル五輪で日本スケート史上最年少出場、94年リレハンメル五輪5000メートルで同種目最高の6位入賞した。しかし、突然、スランプが訪れた。98年長野五輪の出場を逃した。
日本中が清水宏保や岡崎朋美のメダルに熱狂しているころ、同じ長野県内の岡谷市で、たった1人で練習していた。「見に行こうと思えば行けたけど、五輪は選手として行くもの。見るものじゃない」。まして、出ることに意義がある五輪は、過去の2度で終わりにした。3度目は「力及ばないのなら出る意味がない」と決めていた。ソルトレークシティー五輪のメダルだけを見据えながら、トンネルでもがいた。
つまるところ気持ちの問題だった。いいころの滑りに近づけようとする気持ちだけが先行し、落ち着いて滑ることができなくなっていた。白幡を意識して同じ練習メニューにしたことがあったが、自分を失うだけだった。このままでは世界で戦えないと気付き、過去の感覚やライバル心を捨て去った。今の力を出し切るという原点に戻った。2季前からW杯など国際舞台に復帰。ついに男子長距離の五輪代表に一番近い位置を取り戻した。
といっても、現状ではリレハンメル以上の成績が難しいことは分かっている。「(低迷した)過去を考えると、このぐらいではまだ満足できない」。全日本選手権で五輪切符を獲得しなければならないが、9年越しの3度目の挑戦へ少しずつ、確実に前進している。【嶽岡晃樹】
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