|
「日本最北の女」から「世界最速の女」へ。スピードスケート女子500メートルで五輪初出場を目指す渡辺ゆかり(20=富士急)は、山梨県内にある寮の自室に「世界最速の女」と書いた掛け軸を飾っている。現在、書道で師範5段免許を持っているが、高校1年時に夢を書いた作品を大切にしている。
北海道稚内市出身。小学校卒業と同時に、実家に父と兄を残し、中学、高校の6年間をスピードスケートが盛んな帯広市で母と過ごした。競技を続けたい意思を家庭が最大限尊重してくれた。帯広では1カ月の家賃が1万3800円の市営住宅で生活。ぜいたくはできないが、周辺の強豪選手が練習する帯広の森スピードスケート場に近い最高の環境だった。
文字通りスケートひと筋だった。テレビはほとんど見なかった。「時間があったら外に出て、電柱の間をダッシュしていた」。稚内の小学校ではトップ選手でも、レベルの高い帯広に来たころは、小学4年生程度のタイム。離ればなれの生活を認めてくれた家族に報いるためにも、手を抜くわけにはいかなかった。全国中学500メートルを制した時、当時の指導者に言った言葉が「世界最速の女になりたい」だった。
清水宏保(27=NEC)ら五輪選手14人を輩出した白樺学園高(帯広)の門をたたき、インターハイも制した。社会人1年目の昨季はW杯に初出場し、今季もW杯短距離開幕戦のソルトレークシティー大会初日で6位入賞を果たすなど、夢へ着実に歩んでいる。
現在は五輪選考会の全日本スプリント(26日開幕、長野)に向けて、エムウェーブでの練習に熱が入る。今でこそ「テレビはニュースを見るようになった」が、時間のある限り練習する姿勢は同じ。「自分はまだまだです。でも、練習はうそをつかない」。純朴な気持ちは、いつまでも変わらない。【嶽岡晃樹】
|