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ボブスレー
井上将憲

深夜のプールでパンクラス流特訓

 毎週木曜深夜25時。神奈川県内のプールに、パンクラスのレスラー、パワーリフター、空手家など筋肉隆々の大男たちが集合し、黙々と怪しげな動きを繰り返している。その中に、ボブスレー代表の井上将憲(29=東雪工業)は、いた。指導するのは、パンクラスのレフェリー兼チーフトレーナーの広戸聡一氏(40)。未明に行う極秘のアクア・トレーニングが、井上の大きな武器になっている。

 この練習は、両手にベルと呼ばれる器具を持ち、足に特製のブーツをつけて行う。水中でより負荷がかかり、無駄な動きが多いと歩くことさえできない。米国で考案され、広戸氏は6年前に興味を持って、後に指導員の資格を取った。スポーツクラブの好意によって無料でプールを使うため、開始はいつも深夜から。それでも、目的意識の高いアスリートが集うため、いつも熱気が充満している。

 井上と広戸氏が出会ったのは、趣味の4輪駆動車を通じた知人がきっかけ。広戸氏の治療院で体を手入れすることから始まり、今夏から練習のパートナーに発展した。夏は陸上選手として活躍する井上は、秋を境にボブスレーに移行。人間の体の仕組みに精通する広戸氏にとって、競技は異なっても効率よく体を動かす指導に変わりはない。井上は「目からうろこが落ちた」と広戸理論に心酔した。

 広戸氏の井上に対する指導に、金銭のやりとりはない。「こいつのためなら、何かやってやりたいと思った。それは彼の人間性にある。あの負けず嫌いが好きなんです。人にほれなかったら、そこまでできないでしょう」。野球、ボクシングなど一流選手をみてきた広戸氏にとって、井上も魅力的なアスリートであり、人間だった。格闘技と陸上競技の融合。プールでの成果はすでに、ボブスレーW杯のスプリントタイムに表れている。【佐々木一郎】

◆広戸聡一(ひろと・そういち)1961年6月13日、東京都生まれ。杉並区西宮中、国学院久我山高時代から、剣道、柔道、野球、総合格闘技などさまざまなスポーツを経験。専門学校で整体治療を学び、89年にスポーツ整体「広戸道場」を東京・吉祥寺に開く。現在、パンクラスの公認トレーナー兼レフェリー。大リーグ、アトランタ・ブレーブスやカスダマト・ジムなどでトレーナーとして経験を積んだ。170センチ、77キロ。独身。

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