|
五輪の金メダル獲得に挑む盟友のために仕事を犠牲にした。そり系競技スケルトンの宇佐美英樹氏(36)は、教師を辞めてナショナルチーム監督を引き受けた。埼玉県内の中学校では2年生のクラス担任、家庭では夫であり2児の父だが「金メダルを獲得するには、それだけにかけなければ。わりと簡単に割り切ることができた」と、昨年11月に両立より専念することを選択した。
監督業は第一人者の越和宏(36=ホクト産業)に要請された。ボブスレーの選手として88年カルガリー、92年アルベールビル大会の出場を目指した宇佐美監督にとって、越はナショナルチームの同僚だった。アルベールビル代表の国内選考で落選した2人はボブスレーへの思いを断ち切り、宇佐美監督は教師、越は新競技スケルトンへと別々の道を歩んでいた。
スケルトンは今回、54年ぶりに五輪種目に復活した。宇佐美監督に競技経験はないが、長野から埼玉の自宅の家族にまで頭を下げに来た越の誘いを受けた。「彼が(転職を繰り返すなど)苦労していたのは知っていた。手を貸してくれと言われてうれしかった」。監督、広報、運転手、航空券の手配…と仕事は幅広い。「支えるスタッフは素人でも、これだけやった、と自分の中で築き上げたい」と黒子役に徹している。
日本オリンピック委員会(JOC)主任強化コーチの宇佐美監督には1カ月約20万円が支給される。自己負担がなければ海外遠征できない弱小競技団体だけに「貯金を切り崩しながら」の生活が続く。しかし、苦労とは思っていない。むしろ、選手として夢破れた五輪へ再度挑戦できる充実感がある。「越さんに何が何でも金メダルを取らせたい。やりがいあります」。就職活動をしなければならない五輪後のことは、今は考えていない。【桐越聡】
|