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人を引き込む言葉の魔術だ。「Positive(積極的に)!」「Youcandoit(君ならできる)!」。途切れない前向きの言葉が、大きな身ぶり手ぶりとともに連発される。男子フィギュアスケートの本田武史(20=法大)のコーチ、ダグラス・リー氏(51)は、選手を決して強制しない。「選手を育てるとは、教えることじゃない。その選手が持っているものを、最大限に引き出すことなんだ」。そのために、決して後ろ向きな言葉は使わない。選手を盛り上げ、大きなジェスチャーで自信を与えていく。
リー氏は19歳で父を亡くし、幼い弟や妹を養うために、現役を断念。スケートを教える学校を始めて、23歳には会社にした。「相手をよく理解し、つらいことがあっても、常に自信を持って進むことがビジネスの秘けつだった。コーチも同じだ」。苦労の末に導き出した生きる道が、前向きな姿勢につながっている。
フィギュアスケートの難しさは、技術と表現力の両方を求められることだ。バランスを取りながら、選手の特長も出さねばならない。「スタイルは選手の性格や、何をしたいかで決まる。僕は、このスタイルで行けとか、こうした方がいいとかは言わない。彼らが自分たちのスタイルを信じるように助けるだけだ」。その指導法で過去、世界選手権3度優勝のエルビス・ストイコらを育て上げた。
98年末から本田を指導する。勝負弱さを指摘される本田だが、それもリー氏に言わせれば王者になるための通過点ということになる。「つまり練習ではきちんとできる、ということだ。能力のない人は、練習でさえ何も発揮できない。何が練習と本番で違うか。それは自信だけ。自信は時間がかかるし、彼は十分スターになる可能性を秘めている」。
1度話しだしたら止まらない。その言葉の魅力が、本田にメダルが近いことを信じさせた。【吉松忠弘】
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