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モーグル:上村愛子 「外反母趾で限界・・・愛子五輪で引退」
上村愛子(21=北野建設)は「引退」を胸にソルトレークシティー五輪に臨む。長野大会7位で世界に飛び出した女子モーグルの人気者は、昨季W杯種目別総合2位という快挙を達成した。頂点が見え始めた今、来年2月の大会を「自分が最高の演技をする舞台」と位置づけた。スキーを始めた時から外反母趾(ぼし)に悩まされ、それが原因で下半身は限界に近い。五輪のメダルは欲しいが、結果にかかわらず第一線を退く。「愛子スマイル」の裏に悲壮な決意が隠されている。
上村はニッコリ笑って言った。「これ(ソルトレークシティー五輪)を越えて次ってのは考えていない。年齢的にも技術的にも最高の演技ができる舞台と確信してます」。3カ月後に迫った大会時は22歳。それでも、明言こそしないが「最高で最後の五輪」の覚悟を決めている。
愛くるしい笑顔でアイドルになった長野五輪から3年が過ぎた。昨季は世界選手権3位、W杯では7大会中4大会で表彰台に立ち、総合で2位に躍進した。ともに日本人初の快挙で、だれもが認めるトップアスリートに成長した。「長野は楽しいだけの通過点でした。でも、今は違う。楽しい中に苦しい経験もあって、その集大成がソルトレークなんです」。
今回の五輪にかける強い気持ちの裏には、自分の体との闘いがある。小学1年の時から外反母趾が徐々に進行してきている。スキーブーツを履くことによる、いわば「職業病」だ。現在、両足親指の付け根はほぼ45度内側に折れ曲がり、感覚はほとんどない。これが原因で下半身のいたるところに余分な力が加わるようになった。疲労が重なれば足首やひざ、腰に激痛が走る。今年3月の全日本選手権には1日の許容量ぎりぎりの炎症止めをのみ、何層もの湿布とコルセットで患部を固めて出場したほどだ。「滑ってる時は痛みを忘れた」と振り返るが、実際には歩くこともままならなかった。パンプスなどのヒールは4センチまでと制限され、普段はスニーカーしか履けない。おしゃれもままならない。「生活に支障を来してるじゃん、て思う。五輪後はどれだけ(競技が)できるか自信ないです」と打ち明けた。
だから今季、「過去で1番」という筋力トレーニングに取り組んだ。疲労防止とターン、エアの切れを増すため、特に下半身の筋持久力を強化した。5〜7月に行った約70日間のカナダ遠征では、雪上トレには目もくれず腹筋と背筋を鍛え抜いた。背中に負荷をかける背筋運動では、始めた当初の2キロから10キロまで上げられるほど強くなった。太ももは今年3月の44センチから48センチに。筋肉がついたことを示す体脂肪率も昨年の8%が11〜12%にアップ。体重も3キロ増の50キロと見た目もたくましくなった。昨季W杯総合王者のカーリ・トロー(ノルウェー)は170センチ、60キロ。パワーとスピードが不可欠なモーグルだが、156センチの上村も充実度を増している。
精神的にも区切りをつけた。4月から自伝の執筆を開始。今月下旬に発刊予定で216ページにわたって幼いころの初恋、学校生活、両親の離婚からモーグルとの出会い、長野五輪から現在までの出来事や気持ちの変化を書き記した。「自分の気持ちを分析できるいい機会になった」。異例の五輪前の出版になるが、これも上村の決意の表れと取れる。「五輪では絶対後悔しない滑りができる。終わってからじゃ、すごくうれしくて何にも書けなくなっちゃう」。競技人生を最高の笑顔で締めくくりたい。戦いは本格的なシーズンインとともに佳境に入る。【浅見桂子】
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◆「日本人足」国産ブーツがサポート
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上村のメダル獲得を夢のブーツが強力にサポートする。今季から上村のブーツを手がける国産ブランドのレグザムは、指先が広がり気味の「日本人の足」を熟知している。今年5月、外反母趾に悩む上村の要望を受け、足形から採寸。親指付け根の部分にきつい締め付け感がないよう、かかとから親指までのラインを直線に近く仕上げ、かつフィット感の高いブーツを製作した。これに軽量化もプラス。昨季まで使用していた欧州ブランドのものより足先が約2ミリ広がり、重さも150グラム軽い3700グラムになった。
レグザムの選手対策担当の山崎嘉久氏(33)は「付け根が痛くならないことでひざの負担をなくし、腰の痛みも抑えられる。軽量化することでスキー操作がしやすくなる」と説明した。上村は夏場のカナダ、チリ遠征でこのブーツを使用。「痛みが減ったし疲れにくくなった」と好感触を得ている。
スキー板も上村バージョンが用意された。今季も昨季同様に国内ブランドID−ONEを使用する。この板も昨年4月に上村と元モーグル全日本選手だった岩渕隆二氏(28)が開発作製した特注品。約半年かけてサイドカットから長さ、素材、ブーツの取り付け部分のバランスなどを試行錯誤して完成させた。「上下動の多いモーグルで板の跳ね返りの少ないものに仕上がった。結果は昨季のW杯2位の成績の通り」と岩渕氏は自信を見せる。徹底的にこだわり抜いた用具がメダルを引き寄せる。
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◆秘策はコザック含むトリプル技
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長野五輪前から上村を技術面、精神面で支える米国人のスティーブ・ファーレン全日本コーチ(35)は金メダル獲得のための秘策を明かした。エアで上村の代名詞ともいえる「コザック」を含めたトリプル技に挑戦するというものだ。昨季はアイアンクロスコザックのダブル技で世界選手権3位。「愛子はアルペンの経験で基礎フォームができていてターンは上手だ」と分析した上で、小さな体でどれだけ大きく得点の高いエアが見せられるかが勝敗のポイントと指摘した。
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