今、ジャマイカでは

サッカーよりクリケット

 日本と同じくW杯初出場を決めたジャマイカ。レゲエ音楽で有名なカリブ海に浮かぶ常夏の島は、4カ月余りに迫ったフランス大会に向けて何をして、どうなっているのか。1次リーグで日本と対戦するライバル国とその代表チームの「今」を、現地からお伝えします。

 空港から乗ったタクシーの運転手は、サッカー以外のスポーツのことで頭がいっぱいだった。「明日(29日)からクリケットの大会がジャマイカであるんだよ。サッカー? スウェーデンと試合をすることは知ってるけど、僕はクリケットの方が好きなんだ」。  ジャマイカなど数カ国で編成される西インド諸島の代表チームが、29日から5日間連続でジャマイカでテストマッチ(対イングランド)を行っている。28、29日の地元紙は、スポーツ面のトップでクリケットを扱った。テレビ局のスポーツニュースも、トップはクリケット、次にサッカーの順。W杯初出場決定の翌日を祝日にした盛り上がりは、どこにいってしまったのか。

 クリケットには、長かった植民地時代の屈辱を晴らす快感があるようだ。西インド諸島と呼ばれるカリブ海の島々は、英国やスペイン、フランス、オランダなどの欧州各国の植民地だった。住民の多くは、奴隷として過酷な労働を強いられたアフリカ人の子孫。スポーツの世界のこととはいえ、欧州の国に勝つことは、雪辱の意味合いがある。

 一国の代表となるサッカーよりも、西インド諸島の代表になれるクリケットの方が、カリブ海の人々の一体感を増している。地元紙はこのクリケットの人気を、「お返しに欧州を植民地にできるスポーツだから」と解説している。

 この日行われたサッカーのスウェーデン戦のゴール裏は、空席ばかりだった。国立競技場を満員にする日本のサッカー熱とは、明らかな温度差があった。

連載「夢、W杯」

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