岡田ジャパンの「キーワード」

 W杯アジア最終予選真っただ中の、負けが許されない時期だった。岡田武史監督(41)が選手に説き続けたことがある。「ボールから逃げろ」。消極的にも思えるこの言葉こそが、岡田ジャパンの攻撃のキーワードだった。

 「2列目から飛び出せ。スペースに飛び込め」。岡田監督が攻撃陣に要求する動きの原点が、「ボールから逃げる動き」にある。昨年10月。天王山となったUAE戦(国立)の前にチームに合流した小野剛現コーチ(35)は、こう説明した。「相手のミスからチャンスをつくるのではなく、こちらがアグレッシブ(攻撃的)に動いてスペースをつくることが必要なんです」。

 ゴールを焦ると、自然と選手はボールに対して寄ってしまう。選手がボールを持つ選手に集まっていけば、それだけ相手DFは守りやすくなる。そこで岡田監督は、選手の意識改革のために「逃げる」という言葉を利用した。ボールに対して選手が「逃げる」ことで、DFを引き付けることができる。そこに、次の選手が飛び込んでいけるスペースが生まれる。その結果、生まれるのが「波状攻撃」。単調になりがちだった攻撃に活路を見いだすために、岡田監督は「逃げる」動きを選手に植え付けていった。

 この動きは、いわば自らをおとりにしてほかの選手のチャンスを生み出す自己犠牲的なプレー。「世界を相手にした時、日本は1対1ではかなわない。日本は組織力で勝負するしかない」という岡田監督の構想が、ここにも表れている。

連載「夢、W杯」

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