図太い神経、瞬時の判断
W杯に向けて、最後のハードルとなる相手が決まる夜だというのに、岡田武史監督(41)はぐっすり眠っていた。「考えても仕方ない」。外見は神経質そうだ。しかし、実際はその逆。大胆で、小さなことにはこだわらない。第3代表決定戦の相手が決まった翌朝、「イランになると思っていた」と平然と言った。
試合を控えた宿舎の一室で、こんなことがあった。岡田監督は小野剛強化委員(35)とヒザを突き合わせて戦術を練っていた。二人で深夜まで議論を重ねた後、岡田監督は「よし、きょうは寝ないで考えるぞ」。しかし、そう言った直後にイビキをかいていたという。こんなずぶとい神経があるからこそ、極限状態でも冷静な判断を下せたのだ。
ウズベキスタン戦での3トップ、カザフスタン戦での中山、高木の起用、そしてイラン戦でのカズ交代、岡野投入。すべてさい配ミスは許されない場面だった。時間は待ってくれない。熟考している暇はない。瞬時の判断は、精神的にずぶとくなければ無理なことだった。
結婚も瞬時の判断だった。「会ってほしい人がいるから、大阪に連れていくよ」。早大時代、岡田監督は電話一本入れただけで八重子夫人(44)を連れて突然実家に帰った。そのまま料亭へ出掛け、夜まで続いたうたげで結婚が決まった。
イラン戦の延長突入前、岡田監督は腕を組んで選手の周りを歩き回った。岡野投入は決めていた。あとはタイミングだ。すでに二人交代している。岡野を入れれば、これ以上交代はできない。「もし、ケガ人が出たらどうしよう……」。しかし、頭を上げた瞬間、決めていた。「考えても仕方がない。その時はその時だ」。右手が、岡野の背中を押した。ずぶとい神経で下した決断が、大胆なさい配が、日本をフランスへと導いた。
【サッカー取材班】
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