「知識」すぐにグラウンドへ

連載「夢、W杯」

第10回
[目次]

小野強化委員の貢献 2

 イラン戦を控えたマレーシア合宿、汗を噴き出させながら選手に指示を飛ばす小野剛強化委員(35)の姿があった。日本代表に合流したのは10月17日。1カ月しないうちに「コーチ」が板についてきた。

 「やっぱり、グラウンドの上はいいですね」と、小野委員は話した。これまでは、情報収集のスペシャリストとしてビデオの前の仕事が多かった。頭脳ばかりが注目されていたが、小野委員は「私はコーチです」と、現場にこだわる。

 抜群の情報収集能力と分析力を持つ。しかし、それも選手たちに伝えて生かさなければ宝の持ち腐れだ。小野委員は、コーチとしてグラウンドの上で自らの情報を選手に与え、伝えた。だからこそ、その情報が生きた。分析力が、すぐにチームの力になった。

 80年代後半「ハンドスプリングスロー」が大ヒットした。フリースローの時、ボールを支点にしてハンドスプリング(前方回転)して、その反動で遠くまで投げる。筑波大の選手がリーグ戦で披露すると、高校選手権や日本リーグでも使われた。これを「発明」したのが小野委員だった。

 当時筑波大コーチだった小野委員は、米国の古い文献にヒントを得て選手に試させた。本を手に選手と話し合い、マスターさせて試合で使った。知識を知識で終わらせることなく、すぐに選手に実行させた。筑波大コーチ時代の小野委員の机の前には、あふれるばかりに本が積み上げられていた。それが、そのままチームの力になった。

 イングランド協会(FA)公認上級コーチ、全米協会公認上級コーチの資格を持つ。今年初めには、Jリーグの監督ができるS級ライセンスも抜群の成績で取得。卓越した頭脳をグラウンドで生かす。小野委員は、本当の意味で「コーチ」といえる。 

【サッカー取材班】


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