ロジックが生むマジック

連載「夢、W杯」

第11回
[目次]

小野強化委員の貢献 3

 「小野さんの言う通りにしていれば、間違いないですからね」。井原主将は言った。これまで、トップチームのコーチといえば、過去の名選手がほとんどだった。しかし、小野剛強化委員(35)は違った。小野氏は、全く新しいコーチ像をつくったともいえる。

 サッカーでは無名の千葉県立船橋高から筑波大に進んだ。筑波大は、100人もの部員をAからDまで四つのチームに分ける。AやBチームにいれば、公式戦出場のチャンスもあるが、CやDでは皆無。AやBは高校時代に実績のある選手がほとんどだった。

 C、Dの小野委員は、リーダーとして活躍。落ちこぼれそうになるチームをまとめた。BとCの選手入れ替えのための試合も提唱した。選手としては決して一流ではなかったが、指導者としての資質はあった。

 年齢は若い。選手として実績もない。が、小野委員は、選手の気持ちをがっちりとつかんだ。小野委員は試合に向け、各選手にビデオを与える。相手のプレーの特徴をまとめ、選手に対策を立てさせる。「情報は少ない方がいい。たくさん与えても選手が混乱するだけ」と話す。

 例えば、イランのFWダエイ。「全部見せたら、選手が怖がる(笑い)」と最小限に抑えた。「左に流れて足元でパスを受け、クイックシュートを放つ。右の小振りのシュートも危険」と。選手が頭に入れる。相手がその通り動く。「小野さんはすごい」となる。

 選手は、感情では動かない。論理的な分析や説明がなければ納得しない。小野委員は、見事に選手の気持ちをつかんだ。「選手がよく理解してくれた」と小野委員。「小野マジック」ではなく「小野ロジック(論理)」がW杯への道を切り開いた。選手として全くと言っていいほど実績がないコーチでも、W杯に導ける。小野委員のサッカー界に果たした役割は大きい。 (この項終わり)

【サッカー取材班】


W杯メーンページ