W杯初出場を決めた先月16日のイラン戦。北沢が変わった瞬間があった。後半18分、常に川崎でも代表でも一緒にプレーしていたカズが、試合途中で外れた。目の前の2トップには城、呂比須の二人。W杯予選では豊富な経験を持つとは言えない二人に、慎重に球を配った。 「二人とも、まだ試合の流れに乗っていない。なるべく足元にボールを持っていくようにした」。1分後、自陣から山口のパスを受け、右サイドの城の足元にパスを滑らせた。城はヒールでボールを中田に返し、中田のシュートで最初の得点機が終わった。呂比須にも後半26分にパスを通している。ボールを数多く触らせて、2トップの本来の動きを引き出し、同31分の城の同点弾につなげた。 「カズさんが外れて、頼れる人がいなくなった。でも、サッカーは本来、自分しか頼れないスポーツ。自分の能力を信じてプレーした」。オフの沖縄トレ、練習前のランニング、練習後の自主トレ。いつもカズと一緒だった。「カズさんからは見習うべきところが多いよね」。練習に対する姿勢などを学んだ。試合では、カズの動く方向を予測してパスを出す。カズに合わせてきた。その姿勢が、川崎の黄金時代を築いた。 しかしその恩師が、イラン戦途中で目の前から消えた。北沢は攻撃的な選手の中では、最年長になった。2トップを動かした。「二人の足元に」意図的にパスを出した。運動量ばかりが注目されるが、正確なパス出しができることも見せつけた。後半41分、城の頭にパスを合わせ、シュートがクロスバーをかすめた。このチャンスが得点に結びついていれば、世界選抜には北沢が呼ばれたかもしれない。 「W杯予選突破」という結果を残した北沢は、本格的なパッサーへの転身を遂げようとしている。
【サッカー取材班】 (終わり)
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