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因人解放しちゃった
サッカーというスポーツは、どうしてこうも人々に異常な行動を取らせるのでしょう。1970年メキシコ大会中に起きた“事件”です。 メキシコは、30年の第1回ウルグアイ大会から66年の第8回イングランド大会まで6回出場。北中米カリブ海地域の、いわばW杯本大会常連国です。ただ、70年の自国開催を前に1勝3分け13敗、まだ1度も決勝トーナメントに顔を出していませんでした。 さて、地元での第9回大会。メキシコは1次リーグ第1組でソ連と0―0で引き分け、続くエルサルバドル戦は4―0の快勝。リーグ最終戦で欧州の強豪ベルギーと対戦、グスタボ・ペニャ主将のPKによる1点を守りきり、7回目の参加で初のベスト8進出を果たしました。 国中に「メヒコ、ラララ」の歓声がわき起こりましたが、南部のゲレロ州チルパンシンゴでは銃声が鳴り響きました。 重犯罪刑務所のアウグスト・マリアガ所長が母国の快挙に歓喜のあまり「メヒコ万歳!」と叫びながら、ピストルを空に向けぶっ放したのです。それだけなら、どうということはなかったのですが、その後、所内を走り出した所長はすべての独房の扉を開け、142人の囚人を解放してしまいました。 立場が逆転し、今度は所長自身が監獄に入らなければならないかもしれない不祥事。裁判所の判決はどうだったかというと―。 「愛国的高揚状態での行動」ということで、無罪が言い渡されたのです。 「サッカー戦争」(中央公論社刊)という本に載っているホントの話です。 鈴木 武士・フリーライター
◆メキシコ代表 昨年10月のW杯予選終了後、ラプエンテ監督が就任した。若手を起用し、6月のフランスW杯までメンバーを固定しない意向。今月のゴールド杯(北中米カリブ海選手権)では、3連覇を果たした。エースFWエルナンデスが通算4得点の活躍 ◆鈴木 武士(すずき・たけし) 本名・奈良原武士。1937年、東京生まれ。61年に共同通信社に入社。運動部記者としてサッカーのW杯などを現地取材。編集委員を経て、97年定年退職。フリーとなりサッカー、つりなどの原稿を執筆。 |