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労働者が、主張を勝ち取るためにはストはやむを得ないとも言えますが、この強硬手段もW杯には勝てないようです。 1986年メキシコ大会の時でした。国営テレビの民営化に反対する労組が、放送ゼネストを敢行する構えをみせました。しかし、時期が悪かった……。ストは前々から決まっていたのですが、決行日が準決勝のフランス―西ドイツ戦とぶつかってしまったのです。 この大会のフランスはミシェル・プラティニを中心とする「MF4銃士」が光り輝き、ブラジルのジーコが「美しいサッカーを見せてくれるチーム。世界の新しい力」と絶賛したチームでした。1次リーグを無敗で突破、決勝トーナメント1回戦では連覇を狙うイタリアの野望を砕き、次の準々決勝もブラジルにPK戦勝ちしての準決勝進出です。 労組側は対応に苦しみました。サッカーだけを放送するわけにいかないか。でも、駄目だったのです。ストの際、例外として放送できるのは「ニュースと映画1本」と政令で決まっている。「サッカー中継を妨げては国民の支持を失ってしまう」と結局、直前になって伝家の宝刀を抜くことをあきらめたのです。 ところで、準決勝の結果ですが、フランスの方が実力は上とみられていたのにゲームは力で押す西ドイツの勝利。フランスは3位決定戦でベルギーを下し、58年大会以来2度目の3位に終わりました。 鈴木 武士・フリーライター
◆第13回メキシコ大会 マラドーナが大活躍を見せて、アルゼンチンを2度目の優勝に導いた。特に準々決勝では約50メートルのドリブル突破で、W杯史上に残る5人抜きのスーパーゴール。自ら「神の手」と称した「疑惑」のゴールを決め、伝説を生み出した。 ◆鈴木武士(すずき・たけし) 本名・奈良原武士。1937年(昭12)、東京生まれ。61年に共同通信社に入社。運動部記者としてサッカーのW杯などを現地取材。編集委員を経て、97年定年退社。フリーとなりサッカー、つりなどの原稿を執筆。著、編、訳書に「ワールドカップ物語」(ベースボール・マガジン社)、「日本サッカー協会75年史」「ペレ自伝」(講談社)などがある。 |