Vみやげで課税特権取り消し

ワールド杯エピソード
  [目次]    【17】
 1994年米国大会でのブラジルは1次リーグから快進撃でした。無敗でB組首位。決勝トーナメントに入っても1回戦で大健闘の米国を1―0で退け、準々決勝のオランダ戦はロマーリオ、ベベットの自慢のストライカーコンビで2―0とリードしました。男の子が生まれたばかりのベベットが「ゆりかごダンス」のほほ笑ましいパフォーマンスを披露したのはこの時です。2点を取られたものの、最後は弾丸シュートで3―2の勝利。

 準決勝のスウェーデン戦をロマーリオの決勝ゴールで物にしたブラジルは、決勝でイタリアの抵抗に遭いながらも0―0の後のPK戦を3―2と制して、最多の4回優勝を記録しました。

 帰国した代表チームは、例により大変な歓迎を受けました。空港のはるか上空に飛行機が姿を現したところから、恒例の消防車によるがい旋パレードまで生中継され、数千万人がテレビにくぎ付けになったそうです。  フランコ大統領は主要4都市の官公庁を2日間休みにすると発表。さらに税関当局には、選手団の荷物をフリーパスにする特別措置を命じました。

 でも役員、選手たちの荷物はあまりにも多すぎました。日本の電化製品がほとんどで、中にはすぐ電器店が開けるほど大量の土産を持ち帰ってきた者もいたとのこと。選手団の土産の総量は17トン、課税額は1億円と見積もられたというのですからものすごい量です。

 いかにサッカー選手に寛大なブラジル人でも、これには反発が出てくるのは当然です。国税庁長官が大統領に抗議して辞任したことから、騒ぎはエスカレートし、ついには免税特別措置は撤回されあらためて課税することで決着したとのことです。

鈴木 武士・フリーライター

 ◆史上最強の2トップ 94年米国大会のロマーリオとベベットのFWコンビは二人で11点中8点を挙げた。ロマーリオはペナルティーエリア内での卓越した技術で5ゴール、ベベットは3回も「ゆりかごダンス」を披露した。
 ◆鈴木武士(すずき・たけし) 本名・奈良原武士。1937年(昭12)、東京生まれ。61年に共同通信社に入社。運動部記者としてサッカーのW杯などを現地取材。編集委員を経て、97年定年退社。フリーとなりサッカー、つりなどの原稿を執筆。著、編、訳書に「ワールドカップ物語」(ベースボール・マガジン社)、「日本サッカー協会75年史」「ペレ自伝」(講談社)などがある。
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