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歴史的な勝利に首都ソフィアは大興奮です。「(ドイツを倒した)94年7月10日は私たちの新しい祝日になる」と声を震わせる熟年の男性。「興奮して10歳も若返った感じ。こんなうれしいことが、今までのブルガリアで起きたことがあっただろうか」と老婦人。 ジェレフ大統領に至っては「わが国に民主主義が持ち込まれ、選手が国外でプレーできるようになった結果、才能を開花させた。今回の勝利は民主化の成果だ」と喜びの談話を発表したほどです。 ドイツ戦のゴールゲッターはともに外国で働くフリスト・ストイチコフとヨルダン・レチコフの両選手。ストイチコフ選手はスペインのバルセロナ、レチコフ選手はドイツのハンブルク所属で、大統領の言う「民主化の申し子」です。 ひとつ後日談があります。ドイツのネオナチが、ダイビングヘッドで決勝点をマークしたレチコフ選手に、「ドイツに戻ってきたらうち殺してやる」と脅迫状を送りつけたというのです。もちろん本人は「一時的な怒りから。本気にはしていません」と無視の構えだったそうです。 付け加えますと、ブルガリアは準決勝でイタリアに1―2、3位決定戦でスウェーデンに0―4で負けましたが、エースストライカーのストイチコフ選手は通算6ゴールでロシアのオレグ・サレンコ選手とともに得点王に輝きました。
鈴木 武士・フリーライター
◆ストイチコフの米国W杯の全6得点 予選1次リーグのDグループではギリシャ戦で2得点、アルゼンチン戦で1得点。続く決勝トーナメント1回戦のメキシコ戦でも1ゴールを挙げると、準々決勝のドイツ戦、準決勝イタリア戦でも1得点ずつマークした。 ◆鈴木武士(すずき・たけし) 本名・奈良原武士。1937年(昭12)、東京生まれ。61年に共同通信社に入社。運動部記者としてサッカーのW杯などを現地取材。編集委員を経て、97年定年退社。フリーとなりサッカー、つりなどの原稿を執筆。著、編、訳書に「ワールドカップ物語」(ベースボール・マガジン社)、「日本サッカー協会75年史」「ペレ自伝」(講談社)などがある。 |