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第3組のブラジルはしかし、第1戦のスウェーデン戦でジーコ選手の見事なシュートが、主審の終了の笛が鳴ってからのものだとして「幻のゴール」とされドロー、続くスペイン戦も0―0で危うい立場に追い込まれてしまいました。 4年に1度の世界選手権を楽しみにお金をため、会場へ押しかけてきた欲求不満のブラジル人が、コウチーニョ監督の人形を焼いて憂さ晴らしをする光景まで見られるほどでした。 第3戦を前にブラジル陣営に「ブラジル―オーストリア戦はこの会場の最終戦。そこでキックオフ前に閉会式を行います」と大会当局から連絡が入りました。 ブラジルが2次リーグへ行けるかどうかの重要な試合を前にしての華やかな閉会式。「蛍の光」がお別れムードをあおりたてると、ブラジル人記者がポツリとつぶやきました。「相手は既に2次進出を決めているのに、わが方は勝たなければ1次落ちする。“蛍の光”がわれわれの葬送曲にならなければいいのだが……」。 でも、さすがはブラジル。強力なゴールマシン、ロベルトのシュートで1点をもぎとり、GKレオンの好守も光って1―0の勝利を飾ったのです。途端に陽気になるサポーターたち。笛、太鼓の音もにぎやかにサンバを踊りながら繁華街へと繰り出していきました。 その後のブラジルは2次リーグ(準決勝リーグ)無敗ながら得失点差で劣り、同勝ち点のアルゼンチンに決勝進出権を奪われ、イタリアを下しての3位にとどまりました。 鈴木 武士・フリーライター
◆78年アルゼンチン大会 2次リーグA組1位となったホスト国のアルゼンチンとB組1位のオランダが決勝で激突。アルゼンチンはマリオ・ケンペスが1―1から勝ち越し点を決めるなど2ゴールの活躍で優勝を果たした。通算6得点のケンペスは得点王にも輝いた。 ◆鈴木武士(すずき・たけし) 本名・奈良原武士。1937年(昭12)、東京生まれ。61年に共同通信社に入社。運動部記者としてサッカーのW杯などを現地取材。編集委員を経て、97年定年退社。フリーとなりサッカー、つりなどの原稿を執筆。著、編、訳書に「ワールドカップ物語」(ベースボール・マガジン社)、「日本サッカー協会75年史」「ペレ自伝」(講談社)などがある。 |