神の手が5人抜きの神業導いた!?

ワールド杯エピソード
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 アルゼンチンが2度目の優勝を果たした1986年メキシコ大会は「ディエゴ・マラドーナのための大会」でした。たぐいまれな才能を十二分に発揮、自身5ゴールを記録するとともに、味方選手を自在に操り母国を勝利へと導いたのです。この偉大な選手のゲームの中で特別に記憶されるプレーがありました。あの「神の手」ゴールの場面です。

 準々決勝イングランド戦の51分。相手ゴール前でGKピーター・シルトンとマラドーナの両選手が飛び上がり、マラドーナ選手が一瞬早く触れ、ボールはゴールラインを越えた……。GKはすぐハンドのアピール。しかし、主審は得点を認めました。でも、ビデオのゴールシーンはハンドを示しているように思われます。マラドーナ選手の名セリフです。「神の手とマラドーナの頭で決まったゴールだよ」。次に彼が見せてくれたのは5人抜きの「神業」です。60メートルを走ってのミラクルゴール。同僚のホルヘ・バルダーノ選手は「最初の(神の手)ゴールがあったから、彼にはあの得点がどうしても必要だったんだ」と解説してくれました。

 “神の手事件”は、90年イタリア大会1次リーグのソ連戦で再現されました。ただし、今度は守りの局面で、です。ソ連のCKからのボールがアルゼンチンゴールを襲うと、マラドーナ選手がシュートを右手ではたき落とし、ピンチを防いでしまったのです。この時は「とっさに手がいってしまった」とハンドを認めましたが、主審は笛を吹かずゲームは続行。結局、0―2で敗れたソ連の役員は「あのハンドが見えないとは主審は極度の近視に違いない。モスクワの眼科医に診てもらった方がいいよ」と皮肉たっぷりでした。

 この大会のアルゼンチンは決勝で西ドイツに敗れ、2連覇は成りませんでした。

鈴木 武士・フリーライター

 ◆マラドーナとW杯 マラドーナは82年スペイン大会で初登場。2次リーグで敗退したが、86年メキシコ大会優勝。90年イタリア大会準優勝。4回目の出場の94年米国大会は興奮剤使用で大会から追放された。
 ◆鈴木武士(すずき・たけし) 本名・奈良原武士。1937年(昭12)、東京生まれ。61年に共同通信社に入社。運動部記者としてサッカーのW杯などを現地取材。編集委員を経て、97年定年退社。フリーとなりサッカー、つりなどの原稿を執筆。著、編、訳書に「ワールドカップ物語」(ベースボール・マガジン社)、「日本サッカー協会75年史」「ペレ自伝」(講談社)などがある。
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