何をやっても目立っちゃう−名波
1998年3月2日更新

 背番号「10」。誰もが憧れるエース番号です。古くはブラジルの神様ペレ、新しくはアルゼンチンの天才マラドーナ、その数字を見るだけで相手選手は警戒します。その足から放たれる魔法のようなパスやシュートは、相手DFをパニックに陥れ、観客の視線を独り占めします。サッカー選手なら一度は付けてみたいのが「10」なのです。

 ところが、日本の「10」番は違います。「はっきりいって重たい。僕は、あまり目立たない7くらいの方がいいんだけど」。左足のマジシャン、名波浩(25=磐田)は、そう言い続けています。

 名波のプレーは、確かに地味です。MFといっても攻撃的な位置ではなく、DFラインの前の守備的な位置が増えました。華麗なラストパスを出すのは中田、ドリブル突破で切れ込んでいくのは北沢や増田。後方からチームを指揮し、パスを前線に供給する名波は、決して目立ったプレーをするわけではありません。

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 「僕は、縁の下の力持ちの方がいい。長いパスが、FWにずばっと通った時が気持ちいいんです」と話します。もちろん、ゴールするのはうれしいに決まっていますが、パスでもサッカーの喜びを感じられる男。そして、パスでファンを沸かせられる男。それが、背番号「10」の名波です。

  もっとも、昔から「地味」だったわけではありません。子供の頃は「お山の大将」(名波)。常に、みんなの注目を浴び、中心にいなければ気が済まない性格だったそうです。生まれ育った藤枝から、名門の清水商に入ったのも「サッカーで有名になりたい」という一心からでした。  「地味」になったのは、高校時代。1学年上に抜群の感覚でゴール前に走ってくれる藤田(磐田)がいたからです。自らゴールへ向かうよりも自分のパスでゴールへ向かわせること、人を動かすことに快感を覚えたのです。以来、順大−磐田と、人を動かすことばかり。だから「地味な存在でいい」と言うのです。

 「10番なんて、相手のマークを受けるだけだし、面白くないじゃないですか。それより、裏でチームを仕切るような存在でいたい。だから、小学生の時から付けてきた7がいいんです」と、名波は言います。しかし、この要求は受け入れられそうにありません。フランスの大舞台でも「10」でピッチに立つことは間違いないのです。岡田監督やチームメートからそれだけの信頼を得ているのです。  木村和司、ラモスの付けたエースナンバー「10」を受け継ぐ名波。その左足からマジックのように出されるパスが相手FW急所を突く時、本人の気持ちとは関係なく「めちゃくちゃ目立つ」存在になるのです。

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