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最も大事なチームの歯車−北沢 1998年4月13日更新
中田、中村、小野、若手の台頭が著しい日本代表のMF陣だが、どっこいベテランも頑張っている。29歳の北沢豪(川崎)は、熾烈な代表のポジション争いにも「若い選手が入ってくるのはいいことだよね。元気のいい選手にたくさん入ってきて欲しい」と言ってのける。自信があるのだ。 昨年10月、岡田監督が就任した直後、代表に招へいされた。しばらく離れていた代表ユニホームだが、北沢は自信たっぷりに「自分に与えられた仕事はわかっているから」と言った。 ただ、呼ばれた訳ではない。自分が必要とされた理由を理解し、何を求められているのかを知っていた。監督の期待に答えられたからこそ、以来代表の中盤に欠かせない存在になった。4月1日の日韓戦にも先発で出場。Jリーグで絶好調の森島(C大阪)を差し置いてだった。 北沢は常に自分に与えられた役割を全うする。決して個人技に優れているわけではない。相手DFの裏を突くスルーパスを出すわけではないし、ドリブルで相手を何人も抜き去るわけでもない。地味な仕事に徹しているから目立たない。しかし、それがチームの中では最も大事なのだ。 GKだけが手を使ってゴールを守るように、11人にはそれぞれ役割がある。全員がスルーパスを狙ってもパスを受ける選手がいなくてはダメ。全員がゴール前に詰めても、サイドから崩す選手がいなければ攻めにならない。
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北沢は、「スペースを作る」という役割に徹した。自ら動き回って相手のDFを引きつけ、中田や名波のために道を開けた。城や呂比須のマークを外した。ボールから離れて相手のDFを引き寄せるため、自らはボールに絡む目立った活躍はできないかもしれない。しかし、北沢はチームの勝利のために自分を捨てることができる男なのだ。 「みんなが勝手に動いていたって、チームにならないでしょ。自分の仕事をこなすことが大切なんだ」。こう言い切れる選手は、代表の中にも少ない。チャンスを与えられた選手は、数少ないアピールの場だとばかりに個人プレーに走りがち。しかし、北沢は自分の殺すことで自らの存在をアピールしてきた。 サラリーマン時代の経験が大きい。プロ選手しかいない現在の代表の中で、北沢はただ一人、会社員生活を経験している。川崎に移籍する前の本田技研(現JFL)では、アマチュアとして社業のかたわらプレーを続けていた。「バイクだってねじが一本緩んだら走らないでしょ。だから、みんながしっかり与えられた仕事をすることが大事なんだよね」。今の選手にはない貴重な経験が、北沢のサッカー哲学のバックにある。 ダイナスティ杯に来日したジャマイカ代表のシモンエス監督は「誰に気をつければいいか分かったよ」と話した。誰もが、その言葉は、中盤の司令塔、中田を指していると思っていた。しかし、同監督の「日本分析ノート」には、どの数字よりも多く「13」と書かれていた。北沢の背番号だ。「北沢の動きに注意すれば日本は怖くない」と、言いたかったのだ。 チームの歯車になりきれるから、北沢は凄い。パサーでもない、ドリブラーでもない、誰もが嫌がる「汗かき」(運動量豊富に攻守に貢献する選手)になれるから、体格に恵まれなくても代表メンバーとして確固たる地位を築くことができた。「キーちゃん」(北沢のニックネーム)がフランスで走り回る時、日本は記念すべき勝利に近づく。
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