もう「代役」ではない−斎藤
1998年6月8日更新

 いよいよW杯が開幕します。初めて世界の大舞台に挑む日本は、14日にアルゼンチンを相手に歴史的なキックオフの笛を聞くことになります。スイスのニヨンでの合宿から、フランス・エクスレバン入りした日本代表22選手も、最後の調整に追われています。不安材料は、2日の練習で右ひざを負傷したリベロの井原主将。でも、ご心配なく。若き守備陣のリーダー斉藤俊秀(清水)が、順調に仕上がっています。

 「フランスに行くからには、控えはイヤ。レギュラーを奪うつもりでやる」。W杯代表25人に選ばれたとき、斉藤はきっぱりと言い切りました。これまで日本代表として国際Aマッチ14試合に出場していますが、ほとんどが井原や小村らの「代役」。しかし、このスイス、フランスと続いた合宿で、斉藤はレギュラーでプレーできることを十分にアピールしました。

 井原抜きでプレーしたユーゴスラビア戦では、守備陣を見事に統率。FKを直接決められて1失点はしたものの、最後までDFラインは崩れませんでした。井原と同じように、イヤ井原以上に完璧にリベロをこなしたのです。7日に行なわれた地元クラブとの最後の試合では、ただ一人90分間プレー。格下の相手とはいえ、満点の出来。W杯前最後の試合で、素晴らしいプレーを見せました。

 斉藤の武器は、頭です。と言っても、ヘディングではありません。状況に応じたプレーを瞬時に判断。的確なポジショニングと、冷静なプレーで、相手の攻撃を封じます。戦術を理解して、それを具現化する高い能力、ストッパーでもリベロでも、ポジションに必要な動きを完璧にこなす力。感情に流されず、感覚に頼ることのないプレーは、斉藤ならではのものです。

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 「クレバー」。サッカー選手にとって欠くことのできない要素であると言われます。斉藤こそ、この言葉が最も似合います。単純に頭がいいというだけではなく、自分で考え、判断し、実行できる選手。サッカーでは、ピッチに立てば監督の指示は仰げません。自分で考えてプレーしなければならないのです。

 清水のアルディレス監督は、アルゼンチン代表の名MFとして78年地元W杯優勝の原動力になった選手です。「世界で最もクレバーな選手」と言われました。そのアルディレス監督は96年、新人として入ってきた斉藤を見た瞬間に「ビビビッ」と来たそうです。「戦術の理解力が抜群。日本サッカーを支える選手」と絶賛しました。

 昨オフには、英国にあるアルディレスの実家に招かれて、監督の経験や技術を叩き込まれました。Jリーグ入りを決めた早大4年の時には、ポルトガル語を勉強。英語も堪能で、アルディレス監督とも通訳なしで会話します。すべてサッカーのためです。

 ファンや報道陣への応対も紳士的。これも「最も英国紳士らしいアルゼンチン人」と言われたアルディレス監督仕込みでしょうか。プレー同様、常に冷静に、的確に、理論的に話をします。そんなところも、この男の魅力なのです。

 井原のケガは、アルゼンチン戦には完治する見込みです。しかし、すでに「読みやカバーリングは井原より上」という評価もある斉藤だけに、もしかしたらケガあがりの井原を押しのけて、先発のピッチに立つかもしれません。開幕まであと2日、アルゼンチン戦まで6日。いよいよW杯が始まります。

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