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Vのカギは「持つな、つなぐな、攻め込むな」

 どう戦えば世界一になれるのか。今大会の傾向から探る優勝へのキーワードは「持つな、つなぐな、攻め込むな」。ボール保有率、P/Sレーティング(シュートを1本打つのに要するパス本数)テリトリー確保率(相手陣にボールのある割合)ベスト20チームの勝率は5割以下。ボールを持ち、パスをつなぎ、相手陣に攻め込むほど勝てないということになる。今大会の「勝者」は、よりドイツのイメージに近い。

華麗はダメ

 ボールを常に持ち、華麗にパスをまわし、相手陣に入って攻めつづける。やって楽しく見て楽しいサッカーの理想でもある。だが、今大会では勝利に結びつかない。データは「持つな、つなぐな、攻め込むな」という完全に逆のサッカーを浮かび上がらせた。

 ボール保有率上位20カ国の勝敗は6勝4分け10敗。引き分けを除いて勝率を計算すると3割7分5厘になる。P/Sレーティングは4勝4分け12敗で勝率2割5分。テリトリー確保率でも、勝率が5割を切っている(7勝4分け9敗の4割3分8厘)。一般的に考えられる「攻撃サッカー」では勝てないのだ。

 「サッカーとしては最高の大会ではなかった」と、FIFAのブラッター会長が振り返った通り、魅力的な攻撃サッカーをするチームが負けていったのが今大会だ。

 決勝に進出したドイツ、ブラジルともに今大会全体のボール保有率とテリトリー確保率で5割を切っている。P/Sレーティングも平均以下だ。ともに、勝ち残るべくして勝ち残ったと言える。ブラジルの数値は、そのイメージからはほど遠いものだが…。

 攻撃サッカーの象徴のような「ブラジル」の決勝進出で、何となく格好がついているように見える。しかし、そのブラジルも以前のようなサッカーを見せて勝ってきたわけではない。データでも明らかだし、かつてスーパースターと呼ばれた人たちも、そろって同じことを叫んでいる。

「効率」1番

 「決勝戦はつまらない」と言われることがある。魅力的な攻撃サッカーをしたチームが敗れることがあるからだ。54年スイス大会でマジック・マジャールといわれたハンガリー、74年西ドイツ大会をトータルフットボールで席巻したオランダ、いずれも準優勝に終わっている。優勝したのはともに西ドイツだった。

 今大会に関していえば、ブラジルもドイツも、効率のいい戦い方で勝ち進んできた。しかし、より効率的なサッカーを徹底できるのはドイツだ。

 「持たず、つながず、攻め込まず」という今大会の勝利の条件は、ドイツのためにある。

 ◆ブラジルの枠内シュート率1位 いくら「攻めこんだチームほど負ける」とはいっても、ゴールは必要だ。シュート数の多かった20チームは、10勝4分け6敗の6割2分5厘と高い勝率をマークしている。さらにゴールに直結している枠内シュート率の高い20チームを調べると、11勝6分けで3敗しかしていない。

 ブラジルのシュート数(90分換算)は12.8本で32カ国中6番目、枠内シュート率56.3%はトップと高いレベルを誇る。このあたりは「王国」の基本技術の高さの証明か。ドイツは、14.2本のシュート数こそ全体の3番目と高いが、枠内シュート率では37.6%で18位と低迷しているのが気がかりなところだ。勝敗を分けるには1点で十分。このあたりのちょっとした違いがカップの行方を決めることになるかもしれない。

 ◆ファウルの多さは致命傷じゃない ファウルを恐れてはいけない。守備に関して面白いのは、今大会ではファウルの多さは致命傷になっていないという点だ。ファウル数の多かった20チームの成績は、8勝7分け5敗で勝率は6割1分5厘だった。ファウルは相手にFKを与えてしまうため不利になるのが普通である。このデータは、止めなければいけないピンチで、ファウルをしてもきっちりと止めているチームが勝っていることを証明している。ちなみに、もっともファウルの多かったのは日本(90分換算で25本)だったが、勝敗には大きな影響はなかった。

 ◆タックル重要 守勢にまわることを恐れてはいけない。今大会は、守勢のチームが勝っているというデータがある。ブロック・クリア・インターセプト(BCI)総数上位20チームは9勝7分け4敗。6割9分2厘と高い勝率をマークしている。

 タックル数上位20チームにいたっては11勝5分けで、実に4チームしか負けていない。

 普通、勝つチームは攻撃のスタッツは高くても、守備のスタッツは低い。成功率ではなく守備機会の方のスタッツが高くなるということは「攻められている」ことを意味するからだ。ブラジルの90分換算BCIは45.3で、全体平均値(44.1)以上。何と、あのブラジルでさえ、攻められながら勝ってきている。

 一方のドイツも90分換算タックル数で全体平均と一致する31.7と、しっかりと守っている。決勝戦は、攻め合いよりも守り合いになるかもしれない。

 ◆ピッチを大きく むやみやたらに攻め込まず、守りを重視しながらもシュートを打つにはどうすればいいか。答えは「ピッチを大きく使え」だ。今大会はロングボールを多用するチームが強い。クロス成功数の上位も勝っている。ロングボールでピッチを縦に長く使い、クロスボールで横に広く使うことが、効率的な攻撃を生む。当然といえば当然なのだが…。ちなみにロングパス率(全パス数に占めるロングパス数の割合)上位20チームは12勝4分け4敗の7割5分、クロス成功数上位も11勝5分け4敗の7割3分3厘と圧倒的な数字を残す。


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