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<石原都知事インタビュー・下>

詰め甘いサッカー 日本人の本質
 石原慎太郎都知事(69)が、中田英寿(25)を「天才」と言った。「彼は背中に目がある」と。石原知事の語りは熱を帯び、サッカーとナショナリズムへと入っていく。自身の昔話もした。そして、日本のサッカーの問題は、サッカーだけでなく日本人の本質の問題だ、とも指摘した。
(5月29、30日付紙面から=取材・竹村章、南沢哲也)
中田は天才 背中に目がある
石原都知事  −−中田英寿は天才だと思いますか

 石原知事 天才だろうなあ。僕は、ほかのアスリートでは、まず大リーグに行ったイチローは天才だと思う。彼はもの静かで、侍みたいだ。それも小太刀の居合抜きのような。擦れ違いざまに、相手の懐をこう、スパッと切り裂くようなね。同じ感覚が中田にもするね。中田は、調子いいときには、背中にも目がある。全部を背中で見ているでしょ。ボールが来たときに、周りがすべて見えていて、それで、スパッといいパスを出す。その本能はすごいな。

 −−「サッカーは国と国の代理戦争」ともいわれる。W杯とナショナリズムについては

 石原知事 ナショナリズムをあんまりスポーツに持ち込むのもどうかね。でも、結局はそうならざるを得ないのかな。大リーグでイチローとか野茂、佐々木とかが、互角に戦ってくれると日本人を見たような満足感が出てね。ナショナリズムというのは国があるかぎりありますよ。よく「ドーハの悲劇」っていうでしょ。あれは、僕は「ドーハの喜劇」だと思うの。あの試合をテレビで見ていて、向こうがショートコーナーでやった。その瞬間に女房にこれ危ないぞ、って叫んだんだ。やっぱりやられた。予感が当たったから言うわけじゃないけど、ああいうところ日本人って甘い。最後の詰めが甘い。結局、だれか止めてくれるだろうと思ってしまって。日本人の一番ダメなところが出たんだよ。

 −−それが、日本人の本質だと

 石原知事 サッカーの問題は、サッカーだけの問題じゃない。日本人の本質をついている。

 −−知事の、学生のころの話を聞かせてほしい。一橋大時代、サッカー部ですが、どんな選手だった

 石原知事 僕は腰が高くて。フットワークも硬くて、よくフォワードに抜かれるんだよ。背は高かったから競り合いには強かったけれど。ただ、ロングキッカーだけだったね。当時は芝のグラウンドなんてほとんどなかった。でも、当時日本に1つしかない芝生の日産厚生園のグラウンドを借りて練習試合したときには感動したなあ。スライディングタックルしても全然ケガしないしね。岡野俊一郎(日本サッカー協会会長)が2学年上で東大でサッカーをやっていて、長沼さん(健同名誉会長)とか、みんな知っているんですよ。公式戦のグラウンドは、東大の病院前の御殿山にあってね。そのころのサッカーシーズンは冬なんだよ。スライディングして擦りむいたりすると、必ずうんでね。足の付け根のリンパ節まで腫れて、本当にいやだった。

準決勝楽しみ 絶対見に行く


石原都知事  −−そのころ、日本でW杯が開催されると思っていましたか

 石原知事 だいたいW杯なんてそのころ、あったのかなあ。関心はなかったね。外国サッカーといえば、そのころ初めてスウェーデンのチームが来てね。印象に残っているのは、蹴るのより、とにかくそのスローインが飛ぶんだな。ぶーん、と遠くまで。それから、ヘディングシュートが強烈だった。

 −−用具も随分進化した

 石原知事 そうそう、ボールの重さがなんといっても違う。雨の日なんてのは、ボールが水を吸うだろ。形もゆがんでいたし。ヘディングするたびにガーンって。首の後ろが痛くて痛くて。それに比べると今昔の感がありますね。一生に1度あんなプレーをやってみたいなってワザを、今の選手たちは軽々とやるもんな。ボレーでさばいて、バックパスしたり。昔では考えられないよ。

 −−好きな選手っていますか

 石原知事 ペレの試合をブラジルで見たことある。知人を通して会ったこともある。あとは、釜本(邦茂氏)か。双葉山と千代の富士は比べようがないけど、やっぱり釜本が今いたら、ちょっと違った存在になったと思うね。

 −−W杯の試合は見に行きますか

 石原知事 いくつか見ますよ。僕の画家の息子がすごく詳しくてね。準決勝が一番おもしろいって。決勝は、両チームともガチガチに守るから。準決勝は勝たなければならないから、どこのチームも勝ちに行く。だから、激しいよ。準決勝が一番楽しみ。絶対に見に行くよ。

(写真上=「僕らが若かったころはW杯なんて知らなかった。若い人々がこれを機会にいろいろな交流をはかれれば」と真剣な表情で語る石原慎太郎東京都知事=撮影・浅見桂子 写真下=昨年3月10日、東京スタジアムで行われた東京ー東京V戦の始球式を務めた石原都知事)

◆石原慎太郎 (いしはら・しんたろう)1932年(昭和7年)9月30日、神戸市生まれ。小樽での少年時代を経て、湘南高校から、52年に一橋大に入学。在学中に書いた小説「太陽の季節」が文学界新人賞、芥川賞を受賞。「太陽族」の流行語を生み出し、戦後世代作家の旗手といわれた。68年参院に当選し、その後衆院。環境庁長官、運輸相などを務める。95年に議員辞職した。99年4月、都知事選に立候補し当選した。
都庁は司令塔の言う通りに動かない

 ◆取材を終えて
 「石原新党結成」などの永田町の生臭い動きの中、予定のインタビューはW杯開幕直前にセッティングされた。「サッカーあんまり詳しくないんだよな」と言いながらも、石原知事の話は止まらなかった。

 トルシエ監督については、大企業や官僚の管理職にありがちな「男のしっと」を引き合いに出して「嫌いだ」とズバリ。石原氏らしいな、と感じた。ただ、自らの都政のさい配も「オレも都庁の中で司令塔役やってるんだが、これがなかなか思うように動かねえんだ」と嘆いていた。

 意外だったのは、ナショナリズムについて。国と国の戦いであるW杯は、国家論の格好のテーマかと思いきや、熱い言葉は出なかった。学生時代から親しんでいるサッカーと政治は別ということなのだろう。(竹村 章)


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