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2004/04/23
第48幕 悪魔の数字
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| ボンズが歩かされると、スコアボードには「チキン」(臆病者の意味)が登場する |
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ウィリー・メイズの660号本塁打記録に到達し、それを超えたボンズが、今度は連続試合ホームラン記録で注目を浴びた。660号を超えた日、「これで気が楽になった。これからは自分のペースでどんどん打っていく」と言った言葉が、まるでその合図だったかのように、堰を切ったようにホームランを打ち始めたのだ。
地元、SBCパークではボンズがホームランを打つたびに、スコアボードいっぱいに通算ホームランの数字が示される。特に660号以降、連続試合ホームランを打ち始めてからはその数字をバックにダイヤモンドを1周するボンズの絵模様に、サンフランシスコのファンは総立ちになって拍手を送り、酔いしれているようだった。
ところが、4月19日に打った6試合連続ホームランだけは、一瞬歓声があがったものの、そのあとすぐに「オー・ノー」という言葉とともに球場全体に凍りついたような空気が流れた。スコアボードにボンズの通算ホームランを示す「666」の数字が浮かび上がったからだ。スタンドを見渡せば、多くの人が人差し指と人差し指をクロスさせ、十字架を作っていた。
映画「オーメン」で「666」が「悪魔の数字」として象徴的に描かれているところから、人々がその数字に「不吉」なことを予感して、不幸に見舞われないよう祈る姿は、そこがベースボールスタジアムだけあって、異様にさえ映った。こんなに歓迎されなかったホームランは、おそらく今後そうそうはお目にかかれないだろう。
少しでも早く「666」の数字を超えて欲しいという人々の願いは、ボンズが次の日に打った「667」号のホームランでかなえられた。「悪魔の数字」に支配されたのはわずか1日。その数字をバックにホームインしたボンズの姿に、つめかけたファンからは、「やれやれ」といった空気が流れるとともに最短で「悪魔の数字」をかき消した主砲に、スタンディングオベーションを送っていた。
そして、このホームランにはもう1つ大きな期待がかかっていた。ボンズ自身が過去2度記録している6試合連続のホームラン記録を破って、7試合連続に伸ばしたからだ。これが自己新となったばかりか、メジャー記録となる8試合連続にも王手をかける意味ある1発でもあったのだ。
だが、次の日の21日に行われた試合では、ボンズとの勝負を避ける相手チームの作戦にあって、ホームランを打つチャンスをもらえないまま、この記録も途切れ、チームも連敗街道を走ることになった。「自分にとって記録は何ら重要な問題ではない。チームが勝てないことに心が痛む…」と悲壮な顔をしたボンズの姿が象徴的だった。
それもそのはず。この1週間のジャイアンツは1勝6敗とドン底状態。どこかに悪魔の数字のかけらが残っていたのだろうか?と思わせる戦いが続いた。
野球ジャーナリスト 鉄矢 多美子
◎このコラムは毎週金曜日更新予定です
鉄矢 多美子(てつや・たみこ)

福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。
野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。
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